子どもが大学生の頃には年金生活…教育費と老後資金の準備法

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、介護が終わり、これから子どもを授かりたいという共働き夫婦。ただ、もし子どもを授かることができたとしても、大学に通う頃には、夫は年金生活に入っています。教育資金と老後資金はどう準備したらよいのでしょうか。家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

義母を看取り、介護が終わったので、ようやく夫婦の時間を持てるようになりました。これから5年以内にできれば子どもを2人もうけ、10年以内に今の家(介護のために中古物件を購入し住宅ローン支払い中)をリフォームしたいと考えています。

夫は再婚で、あと10年ほど養育費の支払いがあります。ですが、それ以外のお金は家計に入れてくれていて、私の収入と合わせて生活しています。支出もできるだけ抑える努力はしていて、毎月5万円ずつ積立貯金をし、余剰金も5万円ほど出せてはいますが、貯金可能額としてはこれで精いっぱいです。

この先、子どもを授かった場合、子どもが大学に通う頃、夫は年金生活です。教育資金と老後資金、どの程度、どのように貯めていくとよいでしょうか。また併せてリフォーム資金も貯めたいと思っています。

収入に関しては、夫は自営業なので、定年がありません。私は出産をしても、その後職場に復帰するつもりでいます。

〈相談者プロフィール〉

・女性、35歳、既婚(夫:45歳、自営業)

・職業:会社員

・毎月の手取り金額:44.3万円

(夫:23.9万円※月により変動あり、妻:20.4万円)

・年間の手取りボーナス額:約90万円

・普通預金:約100万円

・定期預金:約400万円

【支出の内訳(39.3万円)】

・住居費:5.2万円(住宅ローン)

・食費:4.1万円

・水道光熱費:1.7万円

・生命保険料:1.2万円

・交通費:1.3万円

・自動車ローン:2.8万円

・自動車保険:0.5万円

・ガソリン:1.2万円

・通信費:1.4万円

・交際費:2万円

・趣味・娯楽費:1.8万円

・お小遣い:4万円(1人2万円)

・養育費:5万円

・積立貯金:5万円

・その他:2.1万円


FP:ご相談ありがとうございます。介護生活に区切りがついたのですね。毎月のやりくりは大きな問題はないかと思いますので、これからの貯め方について考えてみましょう。

産休・育休中は手当で乗り切れても、職場復帰は必要

まず、一番近いうちに考えなくてはいけない「出産と生活」から考えてみましょう。

支出状況を見ると、貯金をしなかったとしても、ご主人の収入内に生活費が収まりません。さらに支出を絞ることでなんとか生活することも可能だとは思えますが、複数の目的で貯蓄を作りたいと考えていらっしゃるので、産後の職場復帰は必要だと思えます。

産休・育休中の収入減に伴う生活費も心配かもしれませんが、そこは大丈夫でしょう。相談者さんの職場の産休中の給与はどのような決まりになっているでしょうか。もし、無給となるなら、健康保険から「出産手当金」をもらうことができます。

支給額は、「1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額」とされています。この標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1に相当する金額です。これが産前42日(多胎の場合98日)、産後56日の98日間分を最大として受け取れます。

また産休後、育児休業を取得するなら、「育児休業手当」が受け取れます。開始後180日間は休業を始めた時の給与の67%、それ以後は50%が雇用保険から支給されます。基本的にお子さんが1歳になるまで受けられますが、保育園に入園できないなど特別な事情がある場合1歳6ヵ月まで、それに達しても状況が変わらない場合は2歳まで、手当の受給を延長できます。

産休、育休の期間は、職場に申し出て手続きをすることで、社会保険料の免除を受けることができますが、普段、給与天引きされている住民税は、変わらず支払う必要があります。必要に応じ、支払い方の変更(普通徴収にする)などをしておきましょう。

このように手当が比較的充実していますし、乗り越えることは可能だと思います。

教育資金、老後資金はコツコツ貯める

お子さんの教育資金、ご夫婦の老後資金は、必要になるまでに時間がありますから、コツコツと貯めていきましょう。

長く使わない資金を作るには、積立投資で貯めていくとよいと思うのですが、教育資金については進学のタイミングでどのような進路になるかわかりませんし、ある程度は現金でも貯めておきたいものです。あわせて、つみたてNISAで運用していくと、後のリフォーム資金にすることもできるでしょう。

また、老後資金を考えた時、旦那さんには退職金がないので、しっかりと貯めておく必要がありますよね。年金保険も国民年金だけになるでしょうから、より備えておくことが大切です。自営業の場合、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用して、節税しながら老後資金を積み立てていくのもよいと思います。両方とも、掛け金が全額所得控除になりますので、ただ貯金するだけよりも、所得税、住民税が安くなるというメリットがあります。

小規模企業共済は廃業などで解約する時に、iDeCoでは今のところ60歳になるときにはじめて、お金を受け取ることができます。共済の場合は解約時の状況により掛けたお金よりも少ない金額になる場合もあるので注意が必要ですが、それでも毎年の節税は魅力です。

iDeCoは積み立てたお金を引き出せない期間が長いため不安に思う人もいますが、強制的に老後資金を貯めていると考えて取り組んでいくと、老後資金がある程度できあがると思います。

リフォームは焦らない、まずはお金を貯めること

「リフォームは10年後を目安に」ということですが、時期を定めずに暮らし方が定まるときを目標にしてもよいと思いますよ。2人のつもりでいたのにお子さんが3人になったら部屋の数の問題が起きるでしょうし、夫婦二人になった時のことを考えると部屋数があまり多いと暮らしにくいこともあるかもしれません。

住居の傷み具合にもよる部分がありますが、しばらく大丈夫という見込みであれば、自分たちの暮らし方が定まるまで、お金を貯めて準備しておきましょう。お金を貯めておけば、定年後、年金暮らしになったときにも、住居を建て替えることができるかもしれません。住宅ローンを組まないとリフォームも建て替えもできないと考えるのではなく、ローンを使わなくてもそれらができる準備をしておけばいいのです。

大変なことかもしれませんが、毎月しっかりやりくりし、ボーナスもほぼ貯金できるような暮らし方ですから、きっと貯めていくことができると思いますよ。

ただ、単に貯めるだけではなく、時には自分たちのための旅行費用など気分転換や、やりたいことにお金を使うことも忘れないでくださいね。

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