柄本佑「記念碑的な作品になった」。精神科医役で“心と心が寄り添う”ことを重要視

NHK総合で1月18日スタートのドラマ「心の傷を癒すということ」(土曜午後9:00)の試写会が行われ、主演の柄本佑、脚本家の桑原亮子氏らが登壇した。

同作は、阪神・淡路大震災発生時、被災者の“心のケア”に奔走し、日本におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)研究の先駆者となった精神科医・安克昌氏が懸命に生きた証しをつづるヒューマンドラマ。柄本は「登場人物の方々が、文字の世界なんですが、すごく立体的に見えて、一言一言がふに落ちてきて、これは(脚本家の)桑原亮子さんの血肉みたいな、そういうものが出ている本だと思って。そんな本に出会えることは、こういう仕事をやっていて人生に何回訪れるか分からない。気を引き締めていかなきゃいけないと思った。3カ月で4話を撮影するぜいたくな時間の中で、安さんという人物をゆっくりと探していきました。僕の役者人生の中でも記念碑的な作品になりました」と大切な作品になったことを報告。

精神科医を演じる上で「患者さんとどんな顔で応対すればいいのか難しかった」という柄本。「自分の中での作品のテーマが“心と心が寄り添う”ということだったので、どう寄り添っていくのかということを演じる上で一番重要視していました。でも、僕が寄り添っている気持ちでも、それが画面を通して伝わらないことには意味がない。実際の先生にアドバイスをいただいて、その方の表情に合わせるというものがあったのですが、相手が悲しそうな表情をしているときは、『そうだね、悲しいね』、楽しそうなときは『楽しいね』と表情を合わせるというもので。そのアドバイスを肝に銘じてやらせていただきました」と語った。

また、撮影前に安先生の遺族と対面したそうで「安先生は猫背で声がとても小さくて非常に穏やかにしゃべられる方だと聞きました。なので声の大きさや猫背は意識してやっていましたね。そして、話を聞いていると、とても優しくて大らかな方で、その包み込むような優しさや大らかさはどうしたら出るのかなと思うのと同時に、安さんってすごい人だなって毎日演じながら、すごさを感じながらやらせていただいていました」とその人柄を称賛した。

劇中ではピアノ演奏も披露しているが、「まったく初めてだったので、撮影の2カ月前ぐらいから練習したんですが、気が狂うかと思いました。本当にキツかった」とそれまでのコメント時とは、声を一段上げて大変だったことを強調。「撮影しながら(演奏箇所が)どんどん増えていくんですよ! ここまででいいって言われて練習していたのに、『やっぱりこの辺までお願いしたいんですけど…』って言われて。撮影中もずっとピアノと向き合っていました」と苦笑いし、さらに、「それでも最初に一番難しい『アイ・ガット・リズム』を練習したので、徐々に慣れていきました」と回顧。さらに「六甲おろし」を歌うシーンでは「これまで歌ったことがなかったので、歌詞を覚えるのが大変でした」とエピソードを話した。

脚本家の桑原氏は「25年目の今に震災のお話をする意味。そして、安先生の人生をドキュメンタリーではなくドラマ化する意味。この二つがふに落ちていなければ、ドラマにする意味がないんじゃないかと考えていました」と執筆前の心境を話し、「安先生が目指しておられた支え合える社会というのは、『傷つきに優しい社会』ということにもなると思うんですが、一人一人が大事にされる社会というのを、今、安先生の物語を通して皆さんにもう一度考えていただけたらいいなと思いながら書きました。(完成したドラマでは)安先生の優しさとか、言葉にできない愛情のようなものが流れていて、これがドラマで良かったと改めて思いました」と作品に込めた思いを語り、ドラマの出来栄えに満足している様子だった。

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