昭和基地ってどんなとこ?

 宿舎、食事、寒さ…同行記者の体験

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 第61次南極観測隊に同行中の記者は、乗っていた観測船「しらせ」が昭和基地沖に到着し、ついに基地生活に入った。しらせの生活は予想外に快適だった。が昭和基地生活はどうなのか―。(共同通信=川村敦、気象予報士)

「1夏」の食堂でカレーを食べる第61次南極観測隊員=10日、昭和基地

 ▽最果ての地の人間

 とても変な感じだった。出迎えてくれた第60次越冬隊のメンバーを見ながら、そんな気持ちになった。オーストラリア西部の港町、フリマントルから1カ月もしらせに乗り、海上自衛隊のヘリコプターで基地に入った。最果ての地まで来たと思ったら、そこに人間がいる。しかも日本語まで話しているではないか。不思議としか言いようがない感覚だった。

 基地の周辺は雪解けや除雪のため、岩や土がむき出しになっている。草木一本とてない荒れ地に、冷たく乾燥した風が吹いていた。そこを輸送や工事の車両が行き交う。雪と氷の大地というより、「工事現場」をイメージしてもらうといいだろう。

 昭和基地があるのは南極大陸から約4キロ離れた東オングル島。一口に昭和基地と言っても広い。1957年に開設され、60年以上の歴史を持つ。目的に応じていくつもの建物があり、居住用、観測用などに分かれている。

海上自衛隊のヘリコプターから見た南極・昭和基地=2019年12月30日

 ▽夏期宿舎の生活

 私のように南極の夏期間に来た隊員らが寝起きするのは主に第1夏期隊員宿舎と第2夏期隊員宿舎だ。「1夏(イチナツ)」「2夏(ニナツ)」と呼ばれている。

 私の寝室があるのは平屋建ての2夏。宿泊者は男性だけだ。2人で使っている寝室は2畳か3畳ほど、2段ベッドがあるだけでほとんど足の踏み場もない。廊下との仕切りはカーテン1枚だ。

 トイレは簡易式。小の方は屋外のポリタンクに朝顔が差してある通称「ションポリ」。大の方は用を足した後にボタンを押すと自動でラップでくるんでくれる簡易式のものが屋内にある。水道も風呂もなく、2夏は寝るだけといった感じだ。もちろん、贅沢を言うつもりはない。

 共有スペースには誰かが以前に持ち込んだ「プレイボーイ」や「週刊現代」など、古い週刊誌のほか、有り体に言えばエロ本も置いてあった。壁に貼ってある一昔前のグラビアアイドルのポスターが趣深い。

 そこから3分ほど歩いた所にある1夏は2階建て。水洗トイレ、風呂、洗濯機、食堂を備えている。隊長や副隊長が起居するこちらの方が何かと便利。

 1夏の寝室は4畳半ほどの部屋に2段ベッドが二つの4人部屋。風呂は3~4人が一緒に入れる。水が貴重なので浴槽の湯は循環式だ。お湯が減ってきたら継ぎ足すので「秘伝のたれ方式」と呼ばれているが、お湯が汚れているという印象はない。むしろこんな「僻地」でも風呂に入ることができてありがたい。

「2夏」の共有スペースでくつろぐ第61次南極観測隊=8日、昭和基地

 食事はしらせを運航する海上自衛隊の調理員が作ってくれている。みそ汁とご飯、おかずとバランスがよく、相変わらずおいしい。しらせと違うのは、建設工事などで体を使う業務を担う隊員に配慮してパンやチョコレートバーなどの「中間食」が提供されることだ。

 起床時間は午前6時半で朝食は7時。7時45分に朝礼がありその日の作業内容の説明やラジオ体操をやっている。正午ごろに昼食で、夕食は午後6時半ごろ。

 その後は自由時間となり休んでいる隊員が多いが、白夜のため深夜でも暗くならないせいか、夕食後もつい遅くまで働いてしまう。酒を飲む隊員もいるが、忙しいせいか、しらせ船上のときより控えめな印象だ。

第61次南極観測隊員の樋口実佳さんが使っている居住棟の部屋=10日、昭和基地、樋口さん提供

 ▽吹雪くと外出は危険

 前年から基地にいる第60次の越冬隊員や、第61次の夏隊員でも女性は「居住棟」と呼ばれる建物で生活している。第61次隊の庶務担当、樋口実佳=ひぐち・みか=さん(33)によると、居住棟の寝室は4畳程度。机やロッカー、クローゼットも置かれている。これを第61次隊の女性隊員は1人か2人で使っている。樋口さんは「小さいながらもスペースを有効利用している。ただ、壁が薄く、上階の足音もよく聞こえる。そっと忍者みたいに歩いている」と説明してくれた。

 さて、気になるのは南極の寒さではないだろうか。南半球は現在が夏。昭和基地で最も気温が高くなる時期は1月で、平均気温の平年値は氷点下0・7度。長野市が氷点下0・6度で同じぐらいと思えば、意外に暖かい。着込んでいるせいもあり、晴れて風がなければ暑ささえ感じる。

 ただ、低気圧の接近などで風が吹けば体感気温はどんどん下がる。ブリザードの恐れありとして「外出注意令」が出された1月9日の最大瞬間風速は28・0メートル。雪が真横に飛び、体も飛ばされそうになるほどで、厳しい環境であることを思い知らされた。

南極観測隊のヘリコプターから見た昭和基地。画面奥の左手は接岸中の南極観測船「しらせ」=13日