河北春秋(1/16):作家の故小松左京さんがSF小説『日本沈没…

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 作家の故小松左京さんがSF小説『日本沈没』の執筆を始めたのが1964年。東京五輪の年で新幹線が開通、高層ビルができた。大丈夫かなと思ったのが書く動機だったと、阪神大震災のルポ『小松左京の大震災’95』につづっている▼『日本沈没』では大地震を想定し高速道路の崩壊を描いた。専門家からは「高速道が傾くわけはない」と批判されたが、震災では高速道の崩壊が現実に。小松さんはテレビを見て吐き気がしたという▼震災を取材していた小松さんは鬱(うつ)状態になった。夜に眠れず、酒の力を借りて眠ってもすぐ目が覚めた。心的外傷後ストレス障害(PTSD)だった▼PTSDという言葉が国内で注目されたのは阪神大震災の時。多くの人がPTSDに悩まされた。精神科医らが相談活動を実施。以後、心のケアは東日本大震災などの災害や事件事故で成果を上げた。だが、心の傷は月日とともにきれいになっていく被災地の街とは違う。癒やされることはあっても、傷は消えないという▼阪神大震災からあす17日で25年。大切な人を失った人、怖い思い、つらい思い、寂しい思いをした人がいる。遺族は「風化が進み、忘れられてしまうことが悲しい」と語る。東北にはその痛みが分かる人が大勢いるはず。教訓と悲しみを心に刻みたい。(2020.1.16)