伝統行事をつなぐ

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 1月の本紙地方版は、1年の幸せを祈願する風習の話題が相次いでいる。無病息災、家内安全、豊作豊漁、商売繁盛…人々はさまざまな願いを伝統行事に託す▲参加者は年頭の節目に気持ちを新たにしたことだろう。正月飾りを燃やす鬼火たきを囲んで温まる人々の笑顔を見ると、こちらもほっこりする▲珍しい年中行事の話題も届く。畳を破って昔の合戦を再現する諫早市の楠公(なんこう)祭、子どもが「鬼」と書かれた的を射る新上五島町の「シノマタ」、大般若経を収めた木箱をくぐる松浦市の「大般若さま」…▲これらの風習を巡る環境は変化し続けている。農漁村の多くは過疎や高齢化に直面。都市部でも多忙な現役世代はなかなか地域行事に時間を割くことができない。担い手不足で途絶えてしまった伝統は各地で少なくあるまい▲日ごろスマートフォンのゲームに熱中しているような子どもにとってはどうだろう。伝統行事に触れること、参加してみることは、思ったよりも新鮮で心が弾む体験になるかもしれない▲先祖から代々受け継がれてきた地域の風習を、次世代にしっかり継承しようとしている人々は、まだあちこちにいる。そうして維持されていく伝統行事は、私たちの暮らしが過去から脈々とつながっていると実感できる貴重な機会の一つでもある。(泉)