長崎市の新文化芸術ホール建設 県庁跡地断念か 専門家ら遺構調査求める声

担当職員(右)の説明を聞きながら県庁跡地の調査現場を見学する市民ら=2019年12月、長崎市江戸町

 長崎市が新設する文化芸術ホールの建設地を巡り、従来の長崎県庁跡地(江戸町)を断念し、市庁舎移転後の跡地(桜町)とする可能性が高まっていることが15日、関係者への取材で分かった。県教委による県庁跡地の埋蔵文化財調査で江戸期の遺構や遺物が出土し、より詳細な調査を求める専門家らの声が上がっていることが要因とみられる。

 長崎市は県と今後ホール整備の方向性を協議するとみられる。市は「まだ方針は決めていない」、県は「何も聞いていない」としている。
 県庁跡地は、16世紀の長崎開港後にキリスト教の国内拠点「岬の教会」、江戸初期の禁教令後は長崎奉行所西役所などがあった。県教委は昨年10月から今月15日にかけ、ホール建設予定の旧県庁本館地下部分を中心に、遺跡の調査をした。
 県と市は当初、本館が何度か建て直された歴史を挙げ「(地下は)かく乱された可能性が高い。ほぼ遺構は残っていない」とみていた。しかし、本館西側部分で江戸時代前期(1600年代)の瓦や漆喰(しっくい)の破片をはじめ、各所で長崎奉行所西役所があった江戸期の形状を残す石垣が出土した。
 県教委が委嘱した外部専門家3人は昨年末と今月、現地を視察。「江戸時代前期の古い遺構、遺物が相当残っている」「時間をかけて丁寧に調査するのが望ましい」などとその価値を高く評価した。徹底調査を求めている民間団体もある。
 県庁跡地を巡っては、県と市が2018年11月、解体した市公会堂(魚の町)に代わる「文化芸術ホール」を市が整備する方針で合意し、県は「広場」と「交流・おもてなしの空間」を整備する計画だ。
 市はもともと市庁舎移転後の跡地でホールを整備する考えだったが、より早い整備が可能な県庁跡地に変更した。だが、県との調整に時間を要し時間的な優位性もなくなりつつあるという。市庁舎跡地で整備する場合、ホールの完成は26年度となる見込み。

© 株式会社長崎新聞社