芥川賞に古川真人さん 平戸の祖母「よく頑張ったね」 長崎県関係者ら祝福と期待

©株式会社長崎新聞社

「平戸ゆかりの作家」などと記した古川さんのコーナーで著書を並べる図書館員=平戸市岩の上町、市立平戸図書館

 第162回芥川賞を「背高泡立草(せいたかあわだちそう)」で15日受賞した長崎県ゆかりの作家、古川真人(まこと)さん=福岡市出身=は、これまで3作同賞候補となり、今回で4作目。同日、東京都内のホテルで記者会見し、「候補になるたびに喜んでくれている人たちがいま喜んでいると思うと、それはうれしいこと」と控えめに語った。

 表情にあまり感情を出さない面持ち。「悪い意味ではなく、何でこうなったんだろう、これからどうなるんだろう、というのが今の率直な気持ち」。今後の作品については「自分にとって不慣れなもの、未知のものにしようと思っている」と話した。
 「よく頑張ったね、おめでとう」。受賞作の舞台とみられる平戸市の的山(あづち)大島に暮らす祖母の内田玲子さん(88)は、孫の受賞を喜んだ。古川さんは同島出身の母千穂さん(60)らと毎年のように盆や正月に訪れ、墓参りをして帰るという。内田さんは、初めて芥川賞候補になった古川さんの作品「縫わんばならん」を読んだとき、「あら、うちがモデルになっとると驚いた」と振り返る。「時々(古川さんに)昔のことを聞かれたけれど(当初は)小説を書いているとは思わなかった」と明かす。「今年の正月は来られなかったが、去年のお盆に来たときには(前回芥川賞を受賞できず)残念だったねと話した。今回は本当に良かった」と話した。
 市立平戸図書館では、古川さんのコーナーを設置し、「平戸ゆかりの作家」などと表示。森川享子館長(56)は「作品の根底に流れる家族愛と、方言を交えた一貫した作風に引き込まれる。前3作で受賞しなかったのは本作で受賞するためだったのだと思う」。同市の黒田成彦市長は「多くの読者が平戸市の離島に思いを寄せてくださることは大変ありがたい」とコメントした。
 芥川賞作家で長崎市在住の青来有一さん(61)は、「九州北部の土地や海域に織り込まれた歴史や時間を重層的に描いている。流れている時間と突き上げていく背高泡立草の対比も印象的だった。受賞をきっかけに、さらに飛躍してくれると思う」と期待を込めた。