ドコモ コネクテッドカーに向けた取組み ダイナミックマップの効率的な配信技術へ

自動車業界の「CASE」という潮流の中、ドコモは特にコネクテッド化に注目し、セルラ通信技術による安全運転支援に関する研究開発・検証を行ってきた。その詳細は――?

すべてとコネクテッドする――セルラV2X技術

セルラとは、区画ごとにエリアを分割し、そこに基地局を配置して無線通信を行う方式のこと。セルラ方式では、電波の干渉を防ぐために、隣接する区画ごとに違う周波数を使っている。

自動運転社会に向けて、ドコモはダイナミックマップの情報更新における通信の重要性に注目している。クルマとあらゆるものとコネクテッドする「V2X(Vehicle to Everything」技術の一つは、セルラ通信技術を基盤とするセルラV2Xである。下図は、セルラV2Xの適用領域を示した。

セルラV2Xの適用領域

ドコモは、2018年に、コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパン株式会社、エリクソン、日産自動車株式会社、沖電気工業株式会社、Qualcomm Technologies, Inc. と共同で、日本においてはじめてセルラV2Xの実証実験に成功した。

さらなる効率化:セルラによって一極集中から分散へ

しかし、自動運転の実用化や普及が進み、ダイナミックマップのデータが高頻度に流通するようになった場合、セルラ通信網の負荷低減、速度向上が課題になる。そこで、ドコモは総務省よりダイナミックマップの効率的な配信技術の研究開発を受託した。

この研究開発では、従来はクラウドで一極集中管理することが想定されていた地図データを分散する3点の研究開発を実施した。

1) セルラ通信網内に地域ごとに設置するモバイルエッジサーバを活用して分散管理する技術、

2) 地図データを125m平方や1km平方単位に分割して更新バージョンを付与して管理することにより分割配信および差分配信する技術、

3) 自動運転車両の走行状態や配信データの用途・容量などに応じてセルラ通信と無線LAN通信を動的に切り替えたり同時に通信したりする技術

さらに、横須賀リサーチパークに、モバイルエッジサーバなどの通信環境やダイナミックマップでの検討結果を踏まえて、自動運転車両(同志社大学、名古屋大学、金沢大学、東京大学の協力で4台の車両)を含む実環境を模した実験環境を構築して検証を実施した。

具体的に、検証において、研究開発した技術を用いて、自動運転の処理方式が異なる4台の車両に対してダイナミックマップを配信し、これを受信した4台の車両が同じように走行することを確認した。

検証の結果、セルラ通信網の無線区間・有線区間の通信トラフィックを従来と比較して50%以下に低減可能であることを確認した。また、地図の配信から自動運転車両の走行までのEnd-to-Endのサービス成立性も検証した。

(本記事はドコモR&D;の広報誌『テクニカル・ジャーナル』2020年1月号の記事「コネクテッドカー時代に向けたドコモの取組み」に基づく)

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