ホリエモンが「儲けた社長の始める焼肉屋」を苦々しく思う理由

起業家の堀江貴文さんがプロデュースを担当する、会員制の高級飲食店などを展開するWAGYUMAFIA(ワギュウマフィア)が、新業態の焼肉店のオーナー募集を開始しました。

「普段流通しない生産者の和牛を扱えるようになる」という「焼肉社長プロジェクト」とは、どのような内容なのでしょうか。1月16日の発表会の内容から探ります。


日本には牛も馬もいなかった

WAGYUMAFIAは代表取締役の浜田寿人さんと、堀江さんが2016年に設立。東京と香港に和牛のレストランなどを展開しており、今後はロンドン、ニューヨークなどの海外旗艦店舗のオープンも控えているといいます。

新業態のスタンディング形式の焼肉店は「YAKINIKUMAFIA(ヤキニクマフィア)」。1号店が1月に新宿・歌舞伎町にオープンしました。尾崎牛や神戸牛を食べられる「YAKINIKUMAFIA BBQ BARA PLATE COMBO SET」(5,000円、税別)などのメニューを提供しています。

緊急手術を受けたため、「焼肉社長プロジェクト」の発表会に函館から通話で参加した堀江さんは、WAGYUMAFIAの事業を手掛ける中で、仕入れ、部位、品質のほか、和牛の歴史も勉強してきたと語ります。

「魏志倭人伝に『倭国には牛馬なし』という記述があり、日本には牛も馬もいなかった。朝鮮半島から渡ってきたらしい。なぜ但馬とか近江とかで牛が飼われるようになったのか、いま食べている牛がなぜおいしいのか、食肉の歴史を勉強しないとわからない」(堀江さん)

知識がないと職人の言いなりに

しかし、一般的に焼肉店をオープンさせるのは「事業が成功して、お金に余裕ができた社長」が多いと堀江さんは指摘。そうした社長は、食肉の文化・歴史の勉強をせず、適切な仕入れの知識がないため、職人の言いなりになってしまうパターンがあるそう。結果として、安くてあまり良くない牛を扱っているケースが多々あり、「苦々しく、かわいそうと思っていた」。

「われわれは食肉業界でも料理業界の人間でもない。第三者的な視点でイチから勉強してフラットな目で見て、どの牛がリーズナブルで、どのように焼いて、店作りをすれば焼肉を楽しくおいしく食べられるか、というノウハウを確実に得てきた」(同)

堀江さんはWAGYUMAFIAが「世界で一番知られる和牛のブランドになった」と胸を張り、「目利きとしての自信があり、安定したハイクオリティの和牛を世界に向けて供給する体制を築き上げてきた。生産者との信頼も築き上げてきた。そのノウハウを社長さんに提供する」と、企画の狙いを説明します。

日本は食の物価が安すぎる

新宿のYAKINIKUMAFIAは外国人客が2割を占めており、WAGYUMAFIA全体では平均で5割にもなるほど。インバウンド客をはじめとする、ハイエンド層をターゲットとしています。

代表の浜田さんは、「実感地で言うと、日本は食に関する物価がニューヨークやロンドンの3分の1以下。ホテルと同じように3倍ぐらいにならないと、業界全体がサステイナブルにならない。安くて良いものを作るのが日本人は上手いかもしれないが、どこかで誰かが犠牲になっているのを忘れてはいけない」と語ります。

焼肉社長としてオーナーになれるのは10人だけ。オーナーになれば、WAGYUMAFIAが世界から発掘した高級食材の仕入れルートへのアクセスが可能になり、和牛だけでなく白トリュフ、マツタケ、キャビア、マグロ、ウニなど、市場に流通しないトップランクのものを使用できます。

浜田さんによると、高級なスポーツカーや家を所有していることが、かつての社長のステータスとされていたのが、現在は世界的に「レストランに投資している」「シェフの予約取れる」など食の分野に移ってきました。こうした食材の流通経路にいられるのが、社長にとって大きなステータスになるようです。

しかし、食をビジネスとして捉えるのが重要だとして、「焼肉屋さんをやりたい、この指とまれではない」とメッセージを送ります。

「日本でお金の話をすると、やれ儲けていると、いやしい目で見られたりしますが、ものすごく重要。良いものを高く売るのは、いやしいことではない。経営者の視点はもっとほしい。もっといいアイディア、行動力を持った人と次のWAGYUMAFIAを作っていければ」(浜田さん)

マフィアの力で、日本の食肉文化を世界標準まで高めることができるでしょうか。ホリエモンの目利き力が試されることになりそうです。

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