バラにはバラで真っ向勝負「君は薔薇より美しい」資生堂 vs カネボウ CMソング戦争 1979年 1月17日 布施明のシングル「君は薔薇より美しい」がリリースされた日

POLAとコーセーも乱入、混戦模様のCMソング戦争

79年の化粧品CMソング戦争は、混戦模様で始まった。それまで資生堂・カネボウの国内シェア2強が演じてきたコマソン(コマーシャル・ソングの短縮、現在は死語)バトルに、他の化粧品会社も乱入して来たのである。

POLA が桑江知子『私のハートはストップモーション』(1/25発売)。作詞:竜真知子 / 作曲:都倉俊一によるこのデビューソングは、オリコン週間12位まで上昇。桑江は、この年の各種新人賞レースを竹内まりやと最後まで争うことになる。コーセー化粧品は、オフコース『リリカル・リップ』。シングルカットはされなかったが、この曲を収めたカセットテープが宣伝販促グッズとして使われた。同時期にオフコースが『愛を止めないで』で大ブレイクしたのも追い風となった。

資生堂は東宝の実写映画「ベルサイユのばら」とタイアップ

そんな化粧品CMソング花盛りの79年の春、ちょっと違った路線をとったのが資生堂である。なんと同社は音楽戦争の舞台からいったん降りてしまうのである。その代わりに、東宝の実写映画「ベルサイユのばら」とタイアップ。 制作費10億、邦画でありながらキャストは全員外国人、ベルサイユ宮殿でのロケ敢行!という触れ込み。資生堂は映画でオスカルを演じたヒロインのカトリオーナ・マッコールを春のCMキャラクターに起用。

「劇的な、劇的な、春です。レッド」とコピーを打った…… が、映画興行は惨敗。資生堂のCMキャンペーンも共倒れとなった。たしかに「ベルサイユのばら」は漫画・アニメ・宝塚とも大ヒットしたが、実写映画には無理があった。漫画の実写化はいつの時代も難しい。今となっては、資生堂のこのキャンペーン自体をすっかり忘れている人がほとんどだろう。資生堂は、それから30年後の2010年にも、映画「FLOWERS」の出資で大やけどを負っている。歴史は繰り返す、か。

カネボウのモデルはオリビア・ハッセー、布施明が歌う “薔薇ソング” で真っ向勝負!

それに対し、コスメ界の一方の雄カネボウは、英国の女優、オリビア・ハッセーをCMタレントに起用。資生堂のベルばらに対抗して、挑発的にも、布施明に『君は薔薇より美しい』(1/17発売)を歌わせ、《バラにはバラで》真っ向勝負に出たのであった。結果は、カネボウの大勝利。カネボウ側は、してやったり、の気分だったに違いない。勝手に資生堂がコケてくれて、しかも相手の《ばらブーム》にうまく便乗できたのである。

でも、何よりこの件で一番の果報者は、布施明その人だろう。『君は薔薇より美しい』はオリコンで週間8位、TBS「ザ・ベストテン」では最高4位。布施は過去に25回も NHK紅白歌合戦に出ているが、そのうち4度も(79、03、07、08)この曲を歌うほど彼の代表曲となった。そして後に離婚してしまうのだが、布施はこの曲が縁でオリビアを妻にめとることにも成功したのだ。何ともうらやましい。

『資生堂 vs カネボウ CMソング戦争 ~ 燃えるナツコとゆう子のビート!』につづく

※2016年10月12日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: @0onos

© Reminder LLC