[大弦小弦]災間に生きる

©株式会社沖縄タイムス社

 今から415年前、日本列島を激しい地震と津波が襲った。南海トラフが動いたとされる慶長地震。静岡県西伊豆町の海沿いにある佐波神社も津波に押し流された

▼翌年、再建したとき、願栄という名の僧侶が棟札にしたためた。〈戊(つちのえ)午(うま)(1498)年の津波は寺川の大堰まで。甲(きのえ)辰(たつ)(1605)年には垣の内の横縄手まで入った。末世にその心得がありますように〉

▼津波がどこまで押し寄せたか、地名を書き残した。子々孫々の命を救いたいと祈るかのように。歴史学者の磯田道史さんは、後世の人々が有益な防災情報を得られたといい、「無名の僧に感謝してもしきれない」と著書に記す

▼私たちは「災間」の時代に生きている-。磯田さんは、こう唱える。天災の歴史をたどれば、「災害後」は常に「災害前」という警鐘は正鵠(せいこく)を得る

▼南海トラフは約100年周期で動いてきた。磯田さんによると、90年以内に2回動いたことは歴史上確認できず、間隔が150年空いたこともない。直近は1946年の昭和南海地震。歴史的経験からいえば、猶予は約20年ということになる

▼阪神大震災からきょうで25年。沖縄も無縁ではないことを、各地の津波石や古文書が教えてくれる。命を守る先人の知恵を胸に刻み、謙虚に自然と向き合いたい。いつか必ずやってくる災害に備えて。(西江昭吾)