「何が悪いの!?」 『24時間テレビ』ねつ造疑惑 暗躍した“有名コーディネータ”を直撃取材 他局へも波及する恐れ

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放送業界を震撼させた日テレ「24時間テレビ」やらせ事件

今回の特報で発覚した、日本テレビ(代表取締役会長執行役員 大久保好男・代表取締役社長執行役員 小杉善信)の看板番組の「24時間テレビ」での、タイの撮影でのねつ造疑惑事件。

日本テレビの看板番組であるチャリティー番組の『24時間テレビ』と、ヤラセ無しを謳っていたドキュメンタリーバラエティーの『世界の果てまでイッテQ!』が、タイの北部のチェンマイ県にあるN町で、人々にコムローイを大量に上げさせて、その姿を撮影・放送していた。

24時間テレビでは、これをあたかも日本の東日本大震災の慰霊のために自発的に行われたかのように放送していたが、実際には参加した人々はお金で集められており、そもそも「日本の震災の慰霊だという趣旨など知らなかったし、コムローイの宣伝だと思っていた」と証言している。

しかし、ここで大きな疑問がわく。

チェンマイの空港から近いN町では、コムローイを上げる事は航空機の運航を危険にさらしかねない事から禁止されており、そもそもこの町にコムローイを上げる祭りなどない。

日テレはわざわざN町でコムローイを上げる姿を撮影するために、特別な許可を取り、撮影時間には航空機を止めさせて撮影をしていたというのだ。

これを、まるでN町ではコムローイを上げる祭りや文化があるかのように放送していたのも問題だが、それ以前に、そもそもなぜ特別な許可まで得て、コムローイを上げる撮影をこの街でやらなければならなかったのだろうか?

この疑問を解明するため、TABLO編集部取材班はタイで日テレの撮影の実態について取材を続けた。

キーとなるのは、タイの「有名日本人コーディネーター」

実はN町でのコムローイを上げる企画を撮影した際、『世界の果てまでイッテQ』も、『24時間テレビ』も、いずれも同じタイ在住のバンコクの日系のコーディネーター会社が企画しており、この会社が現地の調整や準備を取り計らっていた。

現地での日系メディアの撮影に詳しい人物は、次のように語る。

「このコーディネーター会社は昔からタイのバンコクにある有名な会社で、80年代頃からテレビなどを中心に番組の海外撮影のコーディネーターをしていました。経営者は有名な日本人です(この人物を“X氏”とします)」

X氏は80年代にはテレビ朝日系列の『川口浩探検隊』(水曜スペシャル)なども担当していましたし、その後も90年代まで日本テレビ系の『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』、フジテレビの『なるほど! ザ・ワールド』など、有名番組を担当していました。

その後、日本テレビの『ザ! 世界仰天ニュース』や『週末のシンデレラ 世界! 弾丸トラベラー』、『世界の果てまでイッテQ!』などを担当しており、今大きな問題となっている日本テレビの『24時間テレビ』も、この会社が現地調整の全てを担当していました。

昔はテレビ番組だけでなく、市場調査などでも人脈を使って仕事をしていたという事ですが、調査業界の人間からは“動物的な勘で仕事をしている”と評される人物がX氏です。」

つまり、日本テレビだけでなく、他のテレビ局の有名番組でもX氏は担当しており、同様の問題をはらんでいる可能性があるというのだ。

詳しい人物は続ける。

「今、放送業界で大きな話題となっている『24時間テレビ』もそうですが、そもそも2018年末に週刊文春が報じて大きな問題となった『世界の果てまでイッテQ!』でのラオスやタイの祭りをねつ造した企画だって、両方ともこのX氏が担当している企画です。この問題が文春砲に取り上げられた際、X氏は週刊文春の突撃取材も受け、その後はBPOで問題となり、聞き取りをされたと聞いています」

これらの問題のある企画は全て、同じコーディネーターによるものだというのだ。

昨年の文春による『世界の果てまでイッテQ!』の祭りねつ造問題については、2018年11月15日に日本テレビの大久保好男氏が会見で一連の騒動を謝罪するにいたり、同番組の祭り企画を当面休止することを発表した。そして2019年7月5日、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は、実在しない祭りをでっちあげたとして「放送倫理違反があったと言わざるを得ない」との見解を発表した事は記憶に新しい。

ところが、今回の『24時間テレビ』でのねつ造疑惑も大きな騒動となる中で、日テレがこのコーディネーターと行ってきたやらせの疑惑は、さらに大きな問題をはらんでいる事がわかった。

そこには、タイ在住の有名コーディネーターX氏が存在し、現地ですべてのことを取り計らった。X氏は上述の通り、過去に多くの日本の番組をコーディネートしてきた人物であり、そのスキルや人脈には敬服するが、バラエティー番組と同じ「ノリ」で日テレの看板番組でありチャリティ番組である『24時間テレビ』で、感動ドキュメンタリーをやらせで作ってしまったのだろうか。

しかも、本サイトが報じてきた通り、この番組はタイの人々に十分に趣旨も伝わっておらず、金で集められた人々だった。それを日本の東日本大震災の慰霊として放送したのだから、タイの人々や文化、日本の被災者にも侮辱的なやらせであると言わざるをえないのではないか。

本サイト取材班がX氏を突撃取材! その反応は?

編集部は、タイのバンコクにある、このコーディネート会社の経営者であるX氏を突撃取材した。

X氏は、(コムローイを上げる事が禁止されている)チェンマイのN町で、コムローイを上げるシーンを2番組で撮影した経緯について、「地元の豪族のようなリーダーと昔から友人だったから」と語った。ただ、取材班が直接会ったその『豪族のリーダー』のことであろう人物は「日本人は知らない」と語っている事から、どちらかが事実を語っていない可能性は考えられる。

そして、週刊文春に『世界の果てまでイッテQ!』の祭りのねつ造を報じられたことについては「週刊文春の記者に突撃取材をされた。あの記事は嘘ばかりだ。文春のせいでBPOにも呼ばれた!」と眉をしかめていた。

X氏はいかにコムローイを飛ばすまでが大変だったか、そして上がったコムローイの美しさ、町の人々は素晴らしい笑顔だったことを詳細にそして懐かしそうに語ってくれたが、こちらが「町の人達はお金をもらって集まったと言ってましたよ」「震災への弔いとは誰も知りませんでしたよ」と最後に言ったところ、X氏の表情は変わり、「それのどこが悪いの!?」と驚くべき発言をしていた。

日本テレビ自体がこのような体質のため、そもそも「やらせ」の問題を認識できないのかもしれない。何がねつ造で、何が真実なのかが理解できていないのではないだろうか。

確かに、X氏の感覚は首を傾げるものがある。しかし彼はあくまでも発注された出入り業者。そう考えると、日テレの責任は重いと言わざるを得ない。

尚、2018年にイッテQの祭りのねつ造疑惑を報じた週刊文春の関係者は、X氏のコメントを受けて「録音テープをそのまま文字に起こしただけ」とコメントしている。(取材・文◎編集部)

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