【レビュー】まさに「愛は最強」。世界中に観てほしいアカデミー賞有力作『ジョジョ・ラビット』

第二次世界大戦下のドイツにおいて、ナチスによるプロパガンダに洗脳されている10才の少年ジョジョ

青少年集団ヒトラーユーゲントに入隊し、訓練に勤しむが、ウサギを殺すことができず、教官からも仲間たちからもからかわれてしまう心優しき少年だ。

空想上の友達はアドルフ(・ヒトラー)。戦争を正しいことだと信じ込み、教官に向かって無垢な表情で「もちろん殺しは好きです」とさらりと言い放つ。

一方、戦争が終わった世界を想像し、「自由になったら踊るの」と明るく口にするのが母ロージー。

身につける洋服や小物はとても洗練されていて美しい色彩のものばかり。それはまるで、明るい未来を手繰り寄せようとする意識の表れに思える。

バカバカしく描かれるナチスの訓練シーンしかり戦争をコミカルに描くことで愚かさを際立たせ、豊かな心を持って気丈に生活を送る人々の姿を描くことで、さらにその愚かさを痛烈に批判し、巨大な悲しみと勇気を放つ。

冒頭では、ヒトラーがヒーローのように崇められる映像のバックにビートルズの“抱きしめたい”のドイツ語ヴァージョンが流れる。

ポール・マッカートニーは当初、ヒトラーを礼賛するシーンでの使用に難色を示したそうだが、本作に込められているメッセージを知って使用をOKしたというエピソードにも納得。

「愛は最強」と息子のジョジョに微笑みながら力強く伝える母ロージー役のスカーレット・ヨハンソンも最高だし、ナチスの最前線にいる立場ながらも「敗戦濃厚」と口にするクレンツェンドルフ太尉役のサム・ロックウェルも最高だ。

監督・脚本・ヒトラー役を務めたのは『マイティー・ソー バトルロイヤル』のタイカ・ワイティティ。

トロント国際映画祭の観客賞を受賞したことでもオスカー受賞の声が高まっているが、気の効いたユーモアと風刺に溢れ、ハートフルでとてもモダンなエンターテインメント映画

笑えて泣けて、老若男女問わず世界中に観てほしい作品だ。

『ジョジョ・ラビット』 あらすじ

心優しい10歳のドイツ人少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は青少年集団ヒトラーユーゲントで立派な兵士になろうと奮闘。しかしジョジョは訓練でウサギを殺せず、教官から”ジョジョ・ラビット”という不名誉なあだ名をつけられてしまう。 母親(スカーレット・ヨハンソン)と二人暮しのジョジョは、ある日、家の奥にユダヤ人の少女(トーマサイン・マッケンジー)が匿われていることに気づく。ジョジョの頼りになるのは、ちょっぴり皮肉屋で口うるさい空想上の友だち アドルフ・ヒトラー(タイカ・ワイティティ)だけ…。臆病なジョジョの生活は一体どうなってしまうのか!?

■監督・脚本 : タイカ・ワイティティ
■キャスト : ローマン・グリフィン・デイビス、タイカ・ワイティティ、スカーレット・ヨハンソン ほか
■配給 : ウォルト・ディズニー・ジャパン

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