カネミ油症 次世代調査へ 五島市など全国で症状聞き取り

カネミ油症被害者支援センター(YSC)の次世代調査に協力していく方針を確認した被害者全国連絡会の総会=福岡市内

 1968年に発覚したカネミ油症事件で救済が遅れている次世代の健康被害について、支援団体カネミ油症被害者支援センター(YSC、東京)が全国的な実態調査に乗り出す。五島市や福岡市などで汚染食用油を食べた人の子や孫を対象に症状や疾病を聞き取って集計し、油症ではない人の平均的な健康状況とも比較。科学的に被害を明らかにすることで、油症認定制度改正などの救済策を国や与野党に求めていく考えだ。
 17日、福岡市内で開かれたカネミ油症被害者全国連絡会総会で報告され、連絡会は調査協力の方針を確認。構成する全国13団体に今後YSCが調査内容を示し、最終同意を踏まえた上で実施する。
 事件後に被害者から生まれ汚染油を直接食べていない子(2世)、また孫(3世)にも被害者と同様の症状が出ているケースがあり、影響が懸念される。ダイオキシン類の血中濃度を重視する厳しい診断基準などが壁となり大半が未認定で、医療費補償などの救済は受けていない。油症認定患者数は2322人(2018年12月末、死者ら含む)、認定患者の子や孫の人数は不明。
 YSCは疫学調査の専門家らの助言を受け、皮膚や内臓、歯などの疾患の有無や、がんの罹患(りかん)状況など約40項目の設問を設定。国の国民生活基礎調査などの項目も加え、健康な人との比較ができるようにする。主にYSCメンバーが直接本人に聞き取るが、差別などを恐れた親がわが子に油症を秘匿している場合も多いため、親世代に聞き取ることもある。集計したデータは専門家の協力を得て分析する。
 YSCは調査結果を活用し、認定患者の子や孫に症状があれば油症認定するよう国などに働き掛ける方針。大久保貞利YSC共同代表は「科学的に明らかにし、国や政治家を動かしたい」。油症2世で連絡会の三苫哲也事務局長は「私も原因不明の症状がある。次世代にどんな症状が多いか明らかにしてほしい」と期待した。

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