戦闘機「雷電」外板を寄贈 座間、大型部品発見は異例

寄贈された海軍戦闘機「雷電」の外板部品

 旧日本海軍が太平洋戦争末期、米軍爆撃機B29を迎撃するために開発した戦闘機「雷電21型」の大型部品が17日、神奈川県座間市に寄贈された。雷電は米国の航空博物館に1機保管されているのみで、大型部品が発見されるのは異例。市内に住む元教員大矢隆男さん(66)が自宅で所有していた。大矢さんは「戦争や平和を考えるきっかけになるよう、活用してほしい」と要望した。

 市によると、部品は機体の操縦席前の外板で、長さ約1.5メートル、幅約1メートル、重さは約7キロ。ジュラルミンとアルミの多層構造になっており、エンジン部分を覆うために湾曲している。保存状態は良好という。

 部品を鑑定した航空史家古峰文三さんによると、リベット(びょう)の打ち方が量産品と比べて精緻で、機体に装着する部分がないことから「工作見本」と推定される。高座海軍工廠(こうしょう)(座間、海老名、大和、綾瀬市)で働いていた台湾少年工らが見本を手本に、製造していた可能性が高い。

 大矢さんによると、自宅に持ち込まれた経緯は不明。大矢さんは「高座海軍工廠で働いていた叔父が戦後、廃棄されたものを持ち帰ったのではないか」と推測する。叔父から雷電の部品と教えられたが、庭にある農作物用の貯蔵庫のふたとして長年使ってきた。

 昨秋、知り合いの市文化財調査員が資料的価値を指摘し、市への寄贈を勧めた。

 市役所で行われた寄贈式で、大矢さんが遠藤三紀夫市長に目録を手渡した。

 大矢さんは「ふたのままだったら、朽ちてなくなってしまうところだった。多くの方に見てもらい、地元の歴史に関心を持ってもらえれば」と期待。市長は「戦後75年を迎える年に、市内で雷電の部品が見つかったことは驚きだ。市史の『貴重な生きた証拠』で、寄贈に感謝する」とあいさつ。「約8400人の台湾少年工らが地下工場の厳しい環境の中で作業に従事した思いとともに、後世に伝えたい」とし、部品を展示や講演で活用する考えを示した。

◆旧日本海軍の局地戦闘機「雷電」

 首都防衛のため、厚木基地(大和、綾瀬市)などに配備された。設計者は旧海軍の主力戦闘機「零戦」を手掛けた三菱重工の堀越二郎技師ら。高高度で飛来するB29に対抗するため、高い上昇力と速度が求められて開発は難航。大型エンジンを採用した結果、機体が砲弾のような独特の形状になった。隣接する高座海軍工廠(こうしょう)で1944年6月に1号機が完成し、終戦までに128機が生産されたとの米軍の調査報告がある。

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