河井氏疑惑、政権に「打撃」 案里氏秘書を聴取

©株式会社中国新聞社

参院選で河井案里氏(右)の街頭演説に駆け付けた安倍首相(中)。左は自民党の岸田文雄政調会長(2019年7月14日、広島市中区)
参院選の期間中、案里氏(左)の支援でマイクを握る菅官房長官(2019年7月16日、広島市中区)

 自民党の河井克行前法相(衆院広島3区)の妻案里氏(参院広島)の陣営を巡る公選法違反(買収)容疑事件は17日、広島地検が公設秘書の任意聴取に踏み切る事態へ発展した。舞台となったのは、自民党が改選2議席の独占を期しながら逃した昨年7月の参院選広島選挙区。案里氏は官邸主導で擁立が決まり、安倍晋三首相や菅義偉官房長官たち政権中枢の度重なる応援を受けて当選した。今回の事件が、安倍首相の政権運営の「打撃」になり得るとの見方も出ている。

 広島の地元事務所の家宅捜索を受け、15日深夜に東京都内の別々の場所で取材に応じた克行氏と案里氏。疑惑の発覚から約2カ月半ぶりに公の場へ姿を見せた2人には、官邸や自民党の幹部に経緯を報告したかどうかの質問が飛んだ。「していない」「直接には、していない」…。否定した2人の声は弱々しかった。

 この記者会見の動画をインターネットで見た元陣営関係者は、官邸や党に対する「忖度(そんたく)」を感じ取った。「数々の疑惑の火の粉が及ばないように、という思惑が強くうかがえる」。事実、参院選で政権中枢の存在を「後ろ盾」として周囲にアピールしていた2人の強気の姿勢は、消え去っていた。

 改選2議席に7人が立候補した広島選挙区は、事実上、自民党の公認を得た新人の案里氏とベテランで現職の溝手顕正氏、野党系の無所属現職の森本真治氏による三つどもえの激戦となった。

 自民党が2人を公認したのは、1998年以来21年ぶり。案里氏には閣僚や党幹部が相次ぎ来援し、宮沢洋一会長たち党県連の主流派が推す溝手氏は劣勢を迫られた。投開票の結果、「自民党の2議席独占の阻止」を掲げてトップ当選した森本氏に続き、案里氏が2位で議席を獲得した。

 とりわけ、案里氏を強力に後押ししたのが官邸だった。選挙中、両氏の陣営がそれぞれ開いた街頭演説をはしごした安倍首相が、溝手氏の応援を前に「案里さんを一番に」と訴える場面もあった。菅官房長官は前哨戦に引き続き、選挙中にも県内を東奔西走。他陣営が「過去に例がない」と口をそろえる過熱ぶりに、菅官房長官と当選同期で、安倍首相にも近い克行氏の影響力との見方も広がった。

 連日の捜査が続く案里氏陣営の公選法違反の疑惑。今後の政治日程を見ると、当面の焦点は、今月20日に召集予定の通常国会に与える影響となる。立憲民主党など野党は夫妻の責任を徹底追及する姿勢を確認。衆参両院の政治倫理審査会に夫妻を呼んで説明を求める方針でいる。

 広島地検の家宅捜索が入った15日午前、菅官房長官は記者会見で河井夫妻に対して「説明責任を果たす必要がある」と述べた。一方、この日深夜に記者団の取材に応じた夫妻は、「捜査への支障」を盾に説明責任を先送り。自民党内からの批判も強まった。同党関係者によると、党本部では既に「捜査の行方次第では国会審議に支障が出て、支持率の急落につながる」との懸念も出始めたという。夫妻は離党や議員辞職を否定したが、政治的な決着の行方は見通せない。(樋口浩二)

河井案里氏秘書を聴取 広島地検、公選法違反疑い

違法報酬102万円か 河井案里氏秘書宅を捜索

河井克行前法相と記者団のやりとり全文(15日)

河井案里氏と記者団のやりとり全文(15日)

【社説】河井夫妻の事務所捜索 議員の責任、どう果たす