マッサージチェア大手が作った「魔法の鏡」は何がすごいのか

マッサージチェア大手のファミリーイナダが、“テレビを超える”と豪語する装置を3月上旬に発売すると発表しました。55型4Kディスプレイを搭載した不思議なデバイスの名前は「AI.Inada.Mirror(AIミラー)」。

テレビを視聴できるだけでなく、「バーチャル試着」やフィットネスの機能も搭載しているという同商品は、まさに「魔法の鏡」。1月15日に開かれたメディア向け商品発表会で明かされた特徴と戦略を深掘りしてみます。


ミラーを見ながらフィットネス

ファミリーイナダでは、ウェアラブルデバイスやスマートフォンと連携して、24時間365日健康管理できるシステム「INADA MEDICAL AIクラウド」を2016年から提供しています。

AIミラーはこれをさらに進化させ、心と身体の健康のトータルヘルスケアソリューションを目指したもの。専用アプリとして、美容やファッション、運動、ヘルスケアなど、10個のコンテンツを搭載しました。

たとえば「運動」(ホームフィットネス)は、フィットネス初心者や高齢者に向けた機能。トレーニングのお手本動画がAIミラーの画面半分に、もう半分に内蔵カメラで映した自分の姿が表示されるので、正しい運動の方法が学べるといいます。

トレーニングの内容は、関西医科大学の木村穣教授が監修。別売りの「ウェアラブルアクティブメジャー」を装着すれば、運動中の心拍数を画面上で確認できるうえ、運動に関するアドバイスも受けられます。

AIがファッションを提案

「バーチャル試着」は、登録したユーザーの顔や体型のデータをもとに、AIがファッションを提案する機能。あらかじめ撮影したモデルの動画にユーザーの顔をはめ込み、まるで自分が試着しているような体験をできるというわけです。

服はスタイリストが監修しており、レコメンドされた商品をAIミラーの画面でブランドのECサイトから購入できる仕組み。サービス開始時は女性向け2社3ブランドのみの展開ですが、「将来的には増やせるだけ増やしたい」と担当者は語ります。

ほかにも「美容」で医師監修のスキンケアや、肌トラブル別の対策方法の紹介などのコンテンツが充実。発売後のバージョンアップで、ヨガやメイクなどのコンテンツが追加される予定です。

同社独自の「リース販売システム」で販売し、価格は5年間のサポートとバージョンアップ込みで、月々3,980円(税別)の60回払い(計41万8,800円)。

AIミラーて家族をつなぐ

当面の販売目標は月間1万台。最初のターゲットは30〜40代の女性に設定していますが、男性やシニア、子供のファッションなどへの拡大を視野に入れており、家族で使えるデバイスとしての位置づけを狙います。

そのため、家族やペットの様子を遠隔地からライブ映像で確認できる「みまもり」機能を搭載。HDMIケーブルでスマホと接続して、写真や動画のAIミラーの大画面で楽しむ「画面共有」機能もあります。

発表会に登場した経済評論家の岸博幸氏は、AIミラーについて「イノベーションにつながるポイントは、テレビに着目した点。スマートスピーカーが流行っていますが、冷静に考えると家庭の中心はリビングのテレビ」と、指摘しました。

ファミリーイナダの稲田二千武・会長兼社長は、スマホが国民に1人1台になったことで、人々が孤独になることを心配しているといいます。AIミラーは美容や健康の機能を目玉としながら、テレビの機能を備えているのは、家族のつながりが健康に結びつくという考えが背景にありそうです。

マッサージチェア大手が開発した「魔法の鏡」。既存のテレビの代わって、多くの家庭のリビングに置かれる日は訪れるでしょうか。

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