【社説】伊方原発の運転禁止 安全性、根本から見直せ

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 原発再稼働を認めた原子力規制委員会の判断は、誤りで不合理―。司法から極めて厳しい評価が下されたと言えよう。

 広島高裁がきのう、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を認めない決定をした。50キロ圏内に住む山口県東部の住民3人が申し立てた仮処分の即時抗告審である。

 争点になった地震の揺れの想定と火山の噴火リスクについて、広島高裁はいずれも規制委の判断に誤りや不合理な点があるとした。再稼働の可否を事実上決める現行の審査は本当に適切に行われているのか。疑いの目を向けざるを得ない。

 ましてや伊方原発は、過去にも広島高裁が運転を禁じる仮処分を受けている。後に仮処分は覆っているが、司法判断が割れている事実は見過ごせない。政府はいったん立ち止まり、原発を推し進める政策を問い直すべきである。

 今回の争点は主に二つあった。まず伊方原発の敷地近くを通る中央構造線断層帯が活断層か否かである。

 広島高裁は、四国電力は断層帯の調査が不十分なのに再稼働を申請したと指摘した。それに異を唱えなかった規制委の判断も「過程に過誤ないし欠落があったといわざるを得ない」と厳しく言及した。

 もう一つは、熊本県・阿蘇山の噴火リスクだ。2017年12月の運転を禁じる決定でも主な要因になった。

 広島高裁は、考慮すべき噴火規模を四国電力が過小に見積もっていると問題視した。再稼働を認めた規制委の判断も「不合理」と結論付けた。

 いずれも、四国電力の調査や規制委の判断を「甘い」と言っているのに等しい。

 政府はこれまで、規制委の審査を「世界最高水準」と自賛してきた。立地自治体もそう受け止め、再稼働を認めた。しかしチェック機能が十分働いていないのなら再稼働の正当性は揺らぐ。規制委の存在意義も問われかねない。

 伊方3号機は先月から定期検査のため停止中だった。3月末の運転再開を目指していたが、山口地裁岩国支部で係争中の差し止め訴訟の判決が言い渡されるまで動かすことはできなくなった。四国電力は不服申し立てをして、仮処分の取り消しを求めていくようだ。

 日本世論調査会の昨年2月の調査では、東京電力福島第1原発事故のような深刻な事故が再び起きる可能性について86%が「心配が残る」と答えている。

 そんな国民の不安をきちんと受け止める気があるなら、今求められているのは原発の再稼働を急ぐことではないだろう。

 四国電力は仮処分の取り消しを求めるより先に、高裁の指摘を踏まえて活断層や噴火のリスクを十分に調査すべきだ。

 規制委は、中国電力島根原発2号機(松江市)などの再稼働に向けた審査を進めている。政府も安全・安心を最優先に考えるのなら、審査をもっと厳格にする必要があろう。

 伊方原発は、広島市の南西約100キロにある。もし放射性物質が外部に放出される重大事故が起きれば、広島、山口県内にも帰還困難区域が生じる恐れがある。瀬戸内海も汚染される。私たちも強い関心を持って、今後の動きを注視したい。

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