郷土愛育むキャリア教育

 JR長崎駅かもめ広場で先日開かれた食関連のイベントで出店をのぞいていたところ、シュークリームの皮が真っ黒な色をした「原石シュー」に目が留まった▲「竹炭が練り込んであるんですよ」と説明してくれたのは瓊浦高情報ビジネス科の生徒さん。長崎市内の菓子店と同科が5年前に共同開発したという。そばには今年の新作「SUNスフレ」も。ごく短いやりとりだったが、誇らしげに語る生徒の表情が印象的だった▲高校生のアイデアを基に、企業が菓子類などを開発、販売する例は少なくない。昨年も「びわとみかんのカステラロールケーキ」(長崎西)、焼きドーナツ「Smiring」(長崎商業)などが販売された▲それらの多くは特産品などを活用したもので、生徒は開発の過程で地域の特長や課題に理解を深めていくという▲こうした取り組みは机上では得難い知識や技能、郷土愛を育む機会として注目されており、県教委は本年度から、中学生が起業体験するキャリア教育事業も始めた▲若い世代の流出が進む本県には人口減少対策としての意義も大きい。いったん県外に出ても、いずれ戻って古里を支える。戻らなくても何らかの形で県外から支援してくれる。地域を知る中で、そんなふうに子どもたちが育ってくれたらいいなと率直に思う。(久)

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