【レビュー】女優・飯島珠奈のほとばしる魂が心に焼き付く―映画『東京不穏詩』

クラブのホステスのバイトをしながら女優を夢見てオーディションにも足を運ぶ主人公のジュン

同棲している恋人との関係もどこか惰性で、仕事上客に体を売ることも厭わなくなっているその日常は、決して理想的とは言えないものの、女優業への夢が心の平穏を支えているような状態。

そんな中、体目当ての常連客からは蔑まれ、恋人が仕向けた男から貯金を全て強盗され、そのうえ顔に深い傷を負ったことから、人生の歯車が大きく狂い始める――。

お金も無ければ、この顔では女優も無理だと、何かをリセットするように故郷に帰省するも、そこには問題のある父親や自分への恋心を引きずる心優しい旧友がいて、事態はさらに変容を極めていく。

絶望して完全に心折れるでもなく、自暴自棄に堕ちていくでもなく、開き直りともまた違う感じで、ただ深い傷と苦痛を抱えたまま、それらの負のエネルギーを貯めたまま前に進んでいく主人公の生き様を気付くとのめり込むように見ていた。

彼女は心の傷を隠してごまかすのではなく、顔に刻まれた傷と同じく、その傷自体が自分の存在そのものであるかのように堂々と行動する。

そんな振る舞いは生き物としての生命力に溢れていて、ただただ美しい・・・

負け続きの中で、次の勝利を決して諦めてはいないボクサーのような表情。冒頭から最後まで、飯島珠奈という女優の五体全体からほとばしる魂にクラクラした。

映画『東京不穏詩』

■監督: アンシュル・チョウハン
■出演:飯島珠奈 望月オーソン 川口高志 真柴幸平 山田太一 ほか
■脚本:アンシュル・チョウハン、ランド・コルター
■配給:太秦

公式サイト:https://www.kowatanda.com/badpoetrytokyo

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