「超ド変態 でかクリ 淫乱様」 顔が分からないから妄想が膨らんだ? 面識のない女性に猥褻な手紙を投函し続けたストーカー裁判の判決は

写真はイメージです

ストーカー規制法で起訴された秋山欣央(裁判当時46)は被害女性Aさんとは全く面識がありませんでした。挨拶程度の会話すらしたことがなく、Aさんからすれば完全に知らない人でした。

ある日、彼は家の近くでAを見かけました。顔をはっきり見たわけでもありません。しかし何故か彼はこの時からAに執着しはじめました。

その後、彼は洗濯物を干している時に偶然Aを発見しました。Aさんもこの時ベランダにいました。この時も顔をはっきり見てはいません。

しかしこの偶然から彼はAさんの住居を突き止めてしまいました。

「顔ははっきり見ていませんが、その中で『こんな人なんじゃないか』と妄想を脹らませていました」

という供述をしています。顔がはっきりわからない、ということが妄想に拍車をかけてしまったのかもしれません。

三度目に彼がAさんを見かけたのは出勤途中、彼女が住んでいるマンションのそばを通った時でした。

その時、Aさんは誰か見知らぬ男性と抱きあっていました。

この光景を目撃した彼は、激しい嫉妬心を抱きました。先述の通り、彼はAさんと言葉を交わしたことすらありません。彼が一方的にAさんを知っているというだけの、客観的には知り合いですらない赤の他人の関係です。もちろん嫉妬心を抱くほどの関係性などまったく築いていません。それにも関わらず、何故か彼は嫉妬心に突き動かされ犯行に至ったのです。

Aさんに起きた最初の異変は、郵便ポストに封筒入りの手紙が入れられていたことでした。

その手紙には

「超ド変態 超でかクリ 本当に24時間性行為してるんだな」

といったような内容が、30行にも渡って綴られていました。

それから1週間の間に何度か真夜中にインターホンが鳴らされることがあり、Aさんは警察に相談に行きました。

警察に相談した翌々日、再びポストに手紙が投函されました。その内容は

「超ド変態 でかクリ 淫乱様」

というようなものです。

その2日後、夜中の2時のことです。Aさんがトイレに入るとインターホンが鳴らされました。犯人は新聞受けを開けて部屋を覗こうとしているような動きもしていました。

「また来た、と思って110番しました。怖くて震えながら110番したのを覚えてます」

と、この時のことをAさんは供述しています。そして新聞受けに手紙を投函して犯人は去りました。

「めったに部屋の電気つけないのに今日はついてる お前の身体超ドS 変態男を欲しがってるじゃないか」

といった内容でした。部屋の電気~と、監視していることを仄めかす文章もあります。

このあとも自転車のカゴに手紙を入れられるなどストーカー被害は続きました。

しかし最初の手紙から1か月後、また郵便受けに手紙を入れたところを警察官が現認し、彼はその場で現行犯逮捕されました。

Aさんは被害感情について、

「わずか1か月の間ですが、怖い思いをして毎日不安で寝不足になり、突発性難聴にもなりました。ひょっとしたら殺されるかもしれない、と思いました。平穏な生活を脅かされました。出来るだけ重い処罰を望みます」

と話しています。

彼は手紙の文面は、

「自分の妄想と週刊誌や雑誌の文面を繋ぎ合わせて書いた」

と話していました。夜中にインターホンを鳴らしたのは、

「早く読んでほしかったから」

だそうです。

彼は一体、なぜ犯行に及んだのでしょうか。検察官の、

「あなたは結局、どうしたかったんですか?」

という質問にはこう答えています。

「書いてる時は何も求めていませんでした。ただ出して、後々考えると何かを求めていたのかもしれませんけど、それが何なのかはわかりません」

Aさんが恐れていたような、危害を加えるようなことは考えていなかったそうです。

「仕事、家族、病気、いろいろ悩みはあった」

とも話していましたが、その悩みについて話すこともなく、その悩みが犯行にどう関係があるかも話されることはありませんでした。

Aは厳罰を希望していましたが、検察官の求刑は「懲役6ヶ月」という、とても軽いものでした。(取材・文◎鈴木孔明)

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