隠された実力はいかに? マツダの都会派SUVで過酷なオフロードコースを試す

マツダの都会派SUVで泥んこ、岩だらけのコースで試しました。いくら悪路に強いと言われる4WDでも、いつもとまったく違ったゴツゴツヌルヌルのハード過ぎるフィールドで、3台の人気SUVはどこまで通用するのでしょうか? ガンガン攻め込んでみました。


ステージはオフロード走行の聖地

エンジン技術のスカイアクティブとか、クルマのデザインコンセプト、魂動(こどう)デザインとか、最近のマツダは「エコロジーとデザイン」といったイメージが強めです。当然、次々と投入されるSUVもどちらかと言えば街乗り派の支持が圧倒的です。いや、今時、マツダに限らずSUVだからといって道なき道を走るなんて人はあまり多くはいないでしょう。ここに来て三菱の本格4WDのパジェロが生産を終えることになったりしていますから、SUV=オフロードという図式を思い描くことはあまりないはずです。

でもせっかく備えたSUVとしての機能はどれぐらいの実力を持っているのでしょうか。一般の人がオフロードを試す機会はあまり多くありません。そこで各メーカーはオフロードでの試乗会を時々行っています。そこに、もっとも泥だらけが似合わないと思われているマツダのSUVを揃え「本格オフロードでもちゃんと走れます!」という試乗機会を用意してくれました。

そこには綺麗なCX-8、CX-5、CX-30がズラリと並んでいました。この手の試乗会では私たちの間ではもはや定番となっている、山梨県の富士河口湖町にある「富士ヶ嶺オフロード」が試乗コースです。富士山の広大な自然と雄大な景観を楽しみながら変化に富んだコースを走ると聞くと、とても穏やかな感じがしますが、現実は「え、本当にここを走るのか!」と驚くほどハードなコースがたっぷりと用意されています。休日ともなれば4WDの極限の走りを楽しみに、多くのオフロードファンが集います。

そこに並んだ3タイプのマツダSUV。綺麗に洗車され、キラキラと輝いています。私たちは2万4,000坪という広い敷地に設けられた400mヒルクライム、35度、30度ヒルクライム、モーグル、バケツ、ロックタイヤといったステージに走り込んでいきます。

CX-30の後方に見える坂がヒルクライムのコースです

いくら4WDとはいえこのハードなコース。そして、ピカピカのクルマを泥だらけのコースに突っ込ませるのは、ちょっぴりかわいそうという気持ちが湧いてきます。

スキー場の上級者コース並み

遠慮気味だったのは走り出したときだけです。そんな気持ちではこの難コースは絶対に走りきれません。マツダ車に現在採用されている4WDシステムを支える「i-ACTIVE AWD」の実力を信じてコースへと突入します。

最初に試したのは「ヒルクライムコース」。もの凄い登りのコースをCX-5で挑戦します。このクルマはロードクリアランス(自動車の最低地上高。路面からクルマの最下部までの長さ)が210mmもあり、凸凹とした路面でもクルマの下を打つ危険性は少ないのです。ヴィッツとかコンパクトカーが120~130mm程度ですから、このクリアランスの長さが分かりますね。

タイヤはこのCX-5も含め、全車ともオンロード用パターンのものですが、これが驚くほどの路面への食いつきを見せて坂道をどんどん登っていきます。当然のように路面は荒れ放題で凸凹の土です。CX-5に備わる電子制御によってタイヤが凸凹の道でも空転したりせずに登ることができます。まさに瞬時に路面状況とドライバーのアクセルの操作量などのバランスを取って、的確にタイヤが路面を捉えるように4輪をそれぞれ制御しているのです。当然のように人間がコントロールするより、はるかにきめ細かな制御ですから、どんどん登ります。

スキー場の上級者コースかのような角度を下ってきます

この制御のお陰で、コース内の凹路面と凸路面の大きなうねりも余裕で乗り越えることができます。この走りは、マツダのスカイアクティブD、つまり低速トルクの強いディーゼルエンジンの特性にも合っているのだと思います。こういうコースを走ってみると、ディーゼルの燃費の良さだけでなく、エンジンとしての特性を実感できます。車高の高さ、エンジンの相性の良さ、そして「i-ACTIVE AWD」による電子制御がオフロードでも走破性を確保していることがよくわかります。

モーグルも凸凹もどんどん進みます

マツダのi-ACTIVE AWDは20個以上のセンサーを駆使して、前後のタイヤの駆動力の配分を積極的に電子制御するものです。そんなマツダ最新の走りを今度はCX-8で試してみます。コースは「モーグル」と呼ばれるところです。あのコブが連続するスキー競技を連想させるコースです。ここでは対角の2輪が路面について、別の対角の2輪が宙に浮くという状況にもなります。対角の2輪だけでどうやって走るのか、いや果たして走りきれるのかをプレミアムなCX-8で試すのです。実際に入り込むと、事前説明の通り、対角の2輪が浮いて、スタックしてしまうような状況ですが、ここでは「オフロード・トラクション・アシスト」を作動させます。するとどうでしょう、しっかりと路面を捉えている方の対角の2輪がパワーを伝え、どんどん前に進みます。この状態が交互にやってくるのですが、途中でスタックすることなく、進んでいきます。

モーグルでは対角の2輪が露面を掴み、別の対角2輪が宙に浮きます

モーグルを抜けると、今度はすり鉢状のコースにそのまま突入。ボディが大きなCX-8ですが、ここも拍子抜けするほどあっけなくすり鉢に降りていき、底から難なく這い上がってきます。正直、CX-8には似合わないシーンですが、走りは頼もしい限りです。

すり鉢コースは後輪が浮き上がるほどの急な下り坂です

轍がある「林間コース」

CX-30が佇む林間コースは一見平和ですがここからハードなコースに突入です

そして人気のコンパクトSUV、CX-30に乗り換え、林間コースに入っていきます。林間と聞くと平和な響きですが、ここも石が飛び出していたり、ハンドルが取られるような轍があったり、きつい登りや落ちていくような下りがあったりと一筋縄では行かないコースです。おまけにCX-30の最低地上高は175mmと3台の中で最も低いのです。当然、重心が低く、安定感がありますからオンロードでの走りは乗り心地も含めて素晴らしいのですが、果たしてオフロードではどうでしょうか。

コースに突入すると、これがつねにドライバーの思うとおりに走り、自由自在に曲がってくれることに少々驚きです。オフロードを難なく急坂路も降りていき、苦もなく這い上がるのは緻密で的確な制御システム「i-ACTIV AWD」があるからこそです。このような状況は災害でもない限り経験しないと思います。それでも優れた電子制御システムは必要で、これだけのゆとりがあるからこそ、一般路では、より安全に走ることが出来るわけです。

日常的にこのような状況はあまり経験しません

このオフロード試乗会では、ただ走るだけ、ということではなく、SUVを使った新しいライフスタイルの提案なども行われていました。オフロードバイクを積んだトレーラーを引き、アウトドアを楽しむとか、キャンプなどの提案も会場内にあります。またこの日のランチはバーベキューという力の入れよう。私たちは終日、マツダの提案したいSUVの世界を感じながら試乗をしました。

試乗会場ではSUVを使った色々なライフスタイルが提案されています

それにしてもこんなハードなコースを走ったあとのクルマたちは泥んこです。ボディの至る所が破損したり、けっこうかわいそうな状態。もちろん、この後適正な修理によって蘇り、また我々の撮影や試乗に活躍してくれるそうです。

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