京アニ跡地巡り思い交錯 遺族「慰霊碑を」、町内会「不特定多数の訪問、生活に支障」

解体工事を前に防音シートに覆われた京都アニメーション第1スタジオ(18日午前11時57分、京都市伏見区)

 36人が死亡、33人が重軽傷を負った京都市伏見区の京都アニメーション(京アニ)放火殺人事件現場の第1スタジオでは、近く本格的な解体工事が始まる。跡地の利用について同社は「定まった計画はない」とする中、地元町内会はファンらが訪れることによる生活への影響を懸念し、慰霊碑を建設したり、公園にしたりしないよう要望している。
 解体工事は今月下旬から始まり、4月下旬まで続く予定。建物はすでに防音シートに覆われ、年明けには解体に向けた準備作業が始まった。同社の代理人弁護士は跡地利用について「遺族や地元関係者とも協議し、諸般の事情を総合的に考慮の上、判断する」とする。
 遺族の一人は京都新聞社の取材に「事件を風化させないため、近くにでもいいから碑を建ててほしい」と話した。
 地元の桃山町因幡東町内会は昨年12月、同社へ「住民の総意」(町内会長)として要望書を提出した。スタジオ周辺に不特定多数が訪れる事態が続いており、公園や慰霊碑が建設されると「平穏が壊され、生活に支障が出る」と懸念。跡地利用を巡る協議に町内会を加えるよう求めた。
 スタジオ近隣に住む女性は「犠牲者36人の魂は心の中に持っているが、事件を忘れたいというのも本心」と複雑な胸の内を明かした。

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