この関係「損している」と思ったときが別れどき、冷静になった女性が学んだこと

相手を本当に好きなときは、たとえ周りからみて「あなたが損しているよ」と言われたところで、聞く耳をもたないもの。好きな気持ちが強すぎて、損得で愛情を計るなんてあり得ないと思ったりもするでしょう。損をしているという実感そのものがないのですから。

ただ、あるときふと気づくのです。「あれ、私ばかりが割りを食ってないか、この関係」と。その時点が、実は別れどきなのかもしれません。


彼のことが好きだから尽くしていた

「彼とは2年ほどつきあいましたが、1年半くらいたったとき、やっと気づいたんです。私、都合のいい女になってるのかなって」

苦笑しながらそう言うのは、マユさん(31歳)です。大学時代の先輩と再会し、つきあい始めたのは彼女が28歳のとき。

「30歳までには結婚したいと思っていたし、3歳年上の彼もそろそろ身を固めたいと言っていたので、結婚もありだなと。だからつい、家庭的な女を演じてしまったんですよね」

演じたとはいえ、彼女は栄養士と調理師の免許をもっているので、「演じた」わけでありません。料理は大好きなので、ひとり暮らしの彼の家に行けば必ず彼女が料理を作り、時間があるときは栄養のことも考えてお弁当を持たせたり、料理を作って冷蔵庫に入れておいたりもしました。マユさんは、とある施設で栄養士と調理士として働いているのですから、料理はお手ものもの。

「彼の口にもあったんでしょうね。『マユの料理、最高』『一生、マユの料理が食べられたら,オレ、人生ハッピーだ』って褒められて、ますますその気になって……」

褒め上手な彼は、彼女の性格や容姿もいつでも褒めてくれました。マユさんは彼のためにもっときれいになりたい、もっと素敵な女性になりたいとヘアスタイルやメイクにも気を遣うようになりました。

友達が来ることになって

「1年半くらいたったころかな、彼が『今度、高校時代の親友を呼んで家で飲み会しようと思う』と言い出して。来るのは4人。だったら私が料理作るよという話になって。彼は友だちにも紹介してくれるでしょうし、私たちの仲が盤石になるいいきっかけになるんじゃないかなと思ったんです」

彼女は有休をとって前日から彼の家に泊まり込み、下ごしらえを始めました。そして当日、やってきたのは男性ふたりと女性がふたり。男性だけだと思っていたマユさんは、少し驚いたそうです。

「まあ、でも友だちなんだからと思い直して、一生懸命、おもてなししました。だけど彼、私を手伝ってくれるわけでもなく、私はひたすらキッチンで働いているだけ。途中でワインまで買いに行かされました」

結局、きちんと友人たちに紹介もされませんでした。

心の奥が切り裂かれるように痛かった

友人たちが帰ったあと、彼女は「紹介くらいしてくれてもいいのに」と彼に不満を漏らしました。すると彼はマユさんをぎゅっと抱きしめ、「ちょっと照れくさくてさ、みんなにはそれとなく大事な人だって言っておいたから」と言ったのです。

「それならまあ、いいかと私も機嫌を直したんですが、友だちに話したら『それっていいように使われているだけじゃない?』と。そもそもそのときの食材費は彼が払ってくれたんでしょと言う友人がいて、どきっとしました。実は2万円近くかかっているんですよね、食材に。彼が恥をかかないように食材も吟味したし、5人分ですから」

それはおかしい、と友人たち全員に言われ、マユさんはふと気づきました。そういえば、彼の家で料理を作っても、いつも自分が食材を買っていることに。

「私は実家暮らしだから、ふたりになるためには彼の家に行くしかない。いつも泊めてもらっているから食材くらいと思っていたけど、友人に言わせると、彼はおいしいものを作ってもらっているのだから食材費くらい出してもいいんじゃないか、それにわざわざ電車賃使って食材買って、重いのをもってきてさらに作ってくれているんだから。泊めるのに費用なんてかかってないでしょと。なんだか目から鱗が落ちたような気がしました」

それ以来、彼女は以前ほど食費にお金をかけなくなりました。すると数ヶ月後、彼が「マユの作るローストビーフが食べたい」と言いだしたのです。

「肉が高いの。食材費、少しカンパしてくれない? と思い切って言ってみたんです。そうしたら彼、聞こえないふりをしていました。なんだか急に何もかもイヤになってしまって、黙って彼の部屋を出ました」

追いかけてくるはずだと思っていましたが、彼は追いかけてきませんでした。そしてそのまま、SNSのメッセージで、「マユがそんなにセコい女だと思わなかった。オレのこと好きだって言ったじゃないか」と怒りをぶつけてきたのです。

「信じられなかった。私が大好きだった彼の正体って、これなのかと愕然としました。私がお金を出して尽くしている間はやさしいけど、ちょっとお金を出してと言った瞬間、態度ががらりと変わってしまった」

結局そのまま関係は終わり…

彼女は、返事を出しませんでした。すると彼からもいっさい、連絡が途絶えたそうです。2年近くつきあった関係はいったい何だったのか。彼女は心の奥が裂けそうになるほど傷ついたといいます。

「私の気持ちが踏みにじられたのが悔しくて。私は褒められたくて作っていたわけじゃない。食べることは大事だから、彼の心身を思って作っていたんです。でも彼にとっては、いい材料でおいしいものを作ってくれる便利な女に過ぎなかったんでしょう」

彼と別れて2年近く経ちますが、彼女はいまだに立ち直れていません。

「なんだか私だけ損しているのかもと思ったときが別れどきなんでしょうね。私ももっと早く別れればよかった」

どんなに愛情に目がくらんでいても、心のどこかで冷静な部分は残しておいたほうがいいのかもしれません。

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