富士山が沈黙破ったら…「火山灰で環境劣悪に」 横浜で専門家指摘

富士山噴火のリスクについて、研究成果を踏まえて説明する萬年さん=県立歴史博物館

 富士山噴火をテーマとした講演会が19日、横浜市中区の神奈川県立歴史博物館であった。県温泉地学研究所の萬年一剛主任研究員が江戸時代の大規模噴火に関する最新の知見を報告。再び同じような事態に見舞われた場合、「火山灰の影響が広範囲で長期間続く。劣悪な生活環境にどれだけ耐えられるかだ」と指摘した。

 1707(宝永4)年に16日間続いた富士山の宝永噴火では、偏西風に流された大量の火山灰が江戸や横浜にも堆積。以来、沈黙を続ける富士山が同様の噴火を起こすと、首都圏の交通や通信、ライフライン、物流などに甚大な影響が出ると懸念されている。

 その対策を探る国の作業部会に関わる萬年さんは、「富士山の噴火は過去3200年間に94回確認されているが、大噴火はそのうち7回」と説明。これに基づけば「宝永のような噴火の確率はかなり低い」としたが、発生した場合は「火山灰を除去できるかどうか。行政を当てにせず、自分たちで行わなければならない」と訴えた。

 宝永噴火後、河川の氾濫や土石流を引き起こす火山灰の影響が200年に及んだ地域があり、人が住まなくなって集落が荒廃する「亡所」も相次いだという。一方、村々では耕作を続けるため、地表を覆う火山灰と下層の土を入れ替える「天地返し」が行われた。

 萬年さんはこうした事例を引き合いに「江戸時代に学ぶことはとても重要」と述べ、現代に置き換えた課題として広域避難や食料の備蓄を挙げた。

 講演会は、同館で開催中の「古文書が語る富士山宝永噴火」展の一環。約70人が聴講した。

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