「地下トンネルは生態系壊す」 リニア建設反対市民がシンポジウム

多くの参加者から自然環境破壊への懸念の声が上がったシンポジウム=川崎市麻生区の麻生市民館

 JR東海が進めるリニア中央新幹線の建設に反対する市民団体「リニア新幹線沿線住民ネットワーク」と「ストップ・リニア訴訟原告団」は19日、川崎市麻生区の麻生市民館でシンポジウムを開き、地下トンネルが南アルプスの豊かな自然を破壊する危険性について意見を交わした。

 JR東海は2027年に品川―名古屋間の先行開業を目指し、各地で工事を進めている。しかし、山梨、静岡、長野の3県にまたがる南アルプスの地下を貫くトンネルの掘削工事について、静岡県の大井川に注ぐ地下水を減少させるとの懸念が強く、同県は着工を認めていない。

 シンポジウムには、静岡県中央新幹線環境保全連絡会議に専門委員として参加する塩坂邦雄さん、弁護士で法政大名誉教授の五十嵐敬喜さんらが出席した。

 五十嵐さんは「南アルプスはユネスコ(国連教育科学文化機関)のエコパークに登録されており、世界遺産と同等に扱うべきものだ」と指摘。「開発行為はエコパーク指定に反するもので、開発の許可処分を取り消し、工事は中止されなければならない」と訴えた。

 塩坂さんは、南アルプスは今でも年数ミリの隆起が測定されている山である点を強調。「地下トンネルは断層を突っ切ろうとしている。地震時に断層が動けば、リニアの走るトンネルはどうなるのか。トンネル工事で地下水も一気に噴出する可能性があり、生態系を壊す。大井川流域の砂漠化を招きかねない」と強い懸念を示した。

 会場の参加者からも、工事が自然環境に及ぼす影響を懸念する意見や質問が相次いだ。

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