1月5~17日の日程で行われた2020年のダカールラリーを終え、トヨタ自動車の豊田章男社長がコメントを発表。途中、マシンを横転させフロントガラスがない状態での走行を強いられながら、総合13位で完走したフェルナンド・アロンソ(トヨタ・ハイラックス)には「ガラスが無しの方が速く走れるからと、フロントガラスを外したんじゃないかと、そこからの追い上げを期待して見ておりました」と冗談を交えた賛辞を贈っている。
F1の第一線を退いたあとは、トヨタとともにWEC世界耐久選手権に参戦し、シリーズタイトルとルマン24時間レース連覇という栄光を手にしたアロンソ。耐久レースへの挑戦を終えたあとは、ラリーレイドへ転向し、2020年大会で世界一過酷と言われるダカールラリーに初挑戦した。
そのアロンソは競技序盤にマシンフロントを痛めるアクシデントがあったほか、競技終盤のステージ10では、砂丘越えの着地に失敗し、マシンを横転させながら斜面を転がり落ちるクラッシュを起こした。
幸い、タイヤが接地した状態でマシンが止まったアロンソのハイラックスは即座に走行を再開。このクラッシュでフロントガラスを失ったものの、無事にステージ10フィニッシュまでたどり着いた。
2度のアクシデントで総合優勝争いからは大きな遅れを取ったアロンソは、最終的に総合1位と4時間42分47秒差の総合13位、ルーキー勢のなかではトップでダカールを完走してみせた。
「この結果に満足しているし、ここに来られたことを本当にうれしく思う。世界一タフなラリーであるダカールに初めて挑戦し、完走を果たせた」とアロンソ。
「TOYOTA GAZOO Racingのスタッフとナビゲーターのマルク、彼ら最高のチームに支えられたおかげで、初挑戦で完走でき、本当に感謝している。本当に楽しい2週間だった」
そして、トヨタ自動車の豊田社長は、このアロンソの活躍に対し、次のようなコメントを発表している。
「フェルナンド(アロンソ)は、ちょうど1年前のデトロイトで彼が私に夢を語ってくれたことが、このダカール挑戦のきっかけだったと思います」
「今回の挑戦においてはパーツの破損や横転などトラブルも沢山あったと聞きました。横転した時は、ひび割れたフロントガラスを外して走り続けてくれていました」
「トヨタではフロントガラスのある車に乗ってくれていましたが、それ以前の彼はフロントガラス無しのクルマに乗るのが得意だったと聞いています。もしかしたら、ガラスが無しの方が速く走れるからと、フロントガラスを外したんじゃないかと、そこからの追い上げを期待して見ておりました」
「それは冗談ですが、道中、自らの手でクルマを修理するなど、厳しい戦いの中で、ラリーの魅力も体で感じてもらえたんじゃないかと思います」
■豊田社長「私の部屋にある2019年トロフィーの横のスペースは、もう1年空けておく」
アロンソを含め、TOYOTA GAZOO Racingとして計4名を送り込んだトヨタだが、陣営最上位はナッサー・アル-アティヤ(トヨタ・ハイラックス)の総合2位。優勝には6分21秒届かず大会連覇はならなかった。
また2020年のダカールラリーでは、四輪市販車部門にチームランドクルーザー・トヨタオートボデー、トラック部門に日野チームスガワラが参戦。チームランドクルーザーはクラス7連勝を達成、日野チームスガワラも10リッター未満クラス11連覇を達成している。
これらの結果すべてに対する豊田社長のコメント全文は次のとおりだ。
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2020年のダカールラリーがゴールを迎えました。
8000キロもの道に挑戦したチームの皆さまお疲れ様でした。
そして完走を果たした皆さまおめでとうございます。
ハイラックスで挑戦し総合2位を獲得してくれたアル-アティヤ選手、ボーメル選手おめでとう!
ラリー前に約束してくれた2連覇は叶わなかったけど、追い上げでトップに迫った後半戦の走りは印象的でした。
私の部屋にある2019年トロフィーの横のスペースは、もう1年空けておきたいと思います。
同じくハイラックスで挑戦してくれたド・ヴィリエール/ハロ組、テン・ブリンク/コルソール組、そしてアロンソ/コマ組、完走おめでとう。
フェルナンド(アロンソ)は、ちょうど1年前のデトロイトで彼が私に夢を語ってくれたことが、このダカール挑戦のきっかけだったと思います。
今回の挑戦においてはパーツの破損や横転などトラブルも沢山あったと聞きました。横転した時は、ひび割れたフロントガラスを外して走り続けてくれていました。
トヨタではフロントガラスのある車に乗ってくれていましたが、それ以前の彼はフロントガラス無しのクルマに乗るのが得意だったと聞いています。
もしかしたら、ガラスが無しの方が速く走れるからと、フロントガラスを外したんじゃないかと、そこからの追い上げを期待して見ておりました。
それは冗談ですが、道中、自らの手でクルマを修理するなど、厳しい戦いの中で、ラリーの魅力も体で感じてもらえたんじゃないかと思います。
日野チームスガワラの皆さんもお疲れ様でした。
1号車、菅原選手、染宮選手、望月選手、クラス優勝、そして11連覇おめでとうございます!
新型の2号車のリタイアは悔しいですが、そこに込めた新たな挑戦に敬意を表します。
“もっといいトラック”を目指し努力してくださったチームの皆さまに感謝申しあげます。ありがとうございました。
トヨタ車体チームランドクルーザーの皆さんもお疲れ様でした。
ワンツーフィニッシュでのクラス7連覇おめでとうございます!
クリスチャン、ジャン・ピエール優勝おめでとう!
三浦くん、ローランも2位おめでとう。だけど、やっぱり2位は悔しそうだったね。
三浦選手からはゴール直後に連絡をもらいました。
彼のコメントを(彼には無断ですが)紹介させていただきます。
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「前回開催地のペルーの方がステージ(砂丘)の難しさはありました。
一方で、サウジは、普段クルマが走っていないような道をコースに使用しています。
そのため荒れていたり、大きな石が転がっていたり、クルマを壊してしまうリスクが大きかったです。
そのため、1日中、気を抜くところがなく大変でした。
近年の南米開催に合わせてスピードが上がったペースに身体もクルマも合わせてきてしまったので、
とにかくパンクを多くしすぎたのが反省点です。
速さより、タフさが求められるラリーだったと思います。その意味でランクルには相応しいステージでした。」
「でも、今回の一番の収穫は本気でクリスチャンに勝負をかけたということです。
チームで競うことに良くないという意見もあるかもしれませんが、一年前から決めていました。
それによって、今までとは全く違う集中力、研ぎ澄まされた感覚の中で、
いかにクルマを速く、スムーズに走らせるかをずっと考えながら乗っていました。
その中で運転の仕方をアレンジしたり、クルマのセッティングを考えなおしてみたり…
本当の意味でランクルの限界と初めて向き合えた気がしています。
目の前にある化け物のような砂丘は恐怖にも近いものでしたが、今回は常にアクセルをあけながら、
前に進めた感覚があるので、楽しかったですし、ランクルの更なる可能性も感じました!いいダカールでした。」
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「道がクルマを鍛える」「モータースポーツという極限の状況の中でクルマも人も育つ」まさにその言葉を感じる彼のコメントでした。
トヨタ自動車、およびトヨタグループは引き続き、モータースポーツを通じて、もっといいクルマづくりを進めてまいります。
皆さま、応援よろしくお願いいたします。