社説(1/21):施政方針演説/空疎に響いた「復興五輪」

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 長期政権のひずみを謙虚に受け止めず、政治不信を招く懸案に向き合う姿勢はない。東京五輪・パラリンピック成功への意欲だけが先行した。五輪への便乗とみられても仕方あるまい。

 第201通常国会がきのう召集され、安倍晋三首相は衆院本会議で施政方針演説を行った。首相周辺は「未来に目を向け、新時代へのスタートを切るとの思いを込めた」と説明するが、昨年と同様に内政・外交の政策課題はこれまでの繰り返しが目立った。停滞感は否めない。

 東日本大震災の被災地として注視したのは、震災復興と五輪に関する内容だ。

 首相は聖火リレーがJヴィレッジ(福島県楢葉、広野町)で始まることや、東京電力福島第1原発事故で双葉、大熊、富岡3町に設定した帰還困難区域のうち避難指示の一部解除を進めると示した。

 宮城や岩手で外国人観光客が増えていることを挙げ、2020年度までの復興・創生期間後も「東北復興の総仕上げに全力で取り組む」と強調。世界の支援に感謝し被災地の姿を発信することを「復興五輪」と位置付けた。

 一方で30~40年は続くと見込まれる第1原発の廃炉作業、たまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水、農産物の風評被害の払拭(ふっしょく)に関しての言及はなかった。

 国のリーダーとして、震災から9年近くたっても続く復興課題を語るべきではなかったか。首相が示したのは、「復興五輪」という看板をアピールするための成果の列挙との印象が拭えなかった。

 首相は今国会で、全世代型社会保障改革の実現や憲法改正論議の進展に力を入れる方針だ。野党はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)に絡む汚職事件などで、対決姿勢を強めている。

 演説では汚職事件のほか、首相主催の「桜を見る会」の問題、英語民間検定試験と国語と数学への記述式問題導入が見送られた大学入試改革に関し、言及を避けた。

 政権にとって都合の悪い問題に触れない手法が恒例となってしまった。これでは施政方針演説の体をなさない。

 手あかの付いた看板の成果を反復するのは、最長政権の自画自賛でしかない。指摘された疑念に向き合ってこなかった繰り返しが、政権全体のおごりにつながったことを見つめ直すべきではないか。

 首相の自民党総裁としての任期は来年9月。悲願とする憲法改正については、改憲案を示すのは「国会議員の責任」と述べた。昨年の「議論を深めることを期待」からやや強め、国会の憲法審査会での与野党の審議を促した。

 昨年の国会では野党が求める予算委員会の審議を政府与党が拒むという場面が多く、「1強」の弊害が極まった。改憲論議を国会の責任と言うならば、国会をないがしろにする対応は慎むべきだ。