いなし国会?

©株式会社長崎新聞社

 大相撲は初場所のさなかだが、相撲の技の一つに「いなし」がある。よそへ行かせる、帰らせるの「往(い)なす」「去(い)なす」からきているらしく、ひょいと相手の攻めをかわすことをいう▲押し出し、上手投げと、正々堂々の土俵が相撲の醍醐味(だいごみ)に違いないが、力士でもない身であれば、厄介ごとや難事といつもがっぷり四つとはいかず、時に「いなし」に頼ることもある▲それでも、一国のトップがはなから「いなし」の構えでは、やる気の程が疑われても仕方ない。通常国会がきのう召集され、安倍晋三首相は「社会保障をはじめ、国のかたちに関わる大改革を進めていく」と演説したが、目の前の難事は素通りした▲「私物化だ」と批判のやまない「桜を見る会」に触れない。「記述式」などが見送られた大学入試改革にも触れない。汚職事件となったカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業にも触れない▲野党が突き上げるのは必至だが、五輪開幕を控えていたりして、会期延長は難しいとされる。いなしておくうちに国会は幕を閉じ、国民の目は五輪に向くものだと、計算ずくなのかどうか▲相撲では、得意の型に持っていくのを「自分十分」というらしい。響きのいい言葉だが、首相の自分十分が「いなし」では、国会という土俵での名勝負が思い描けない。(徹)