写真家・奈良原一高さん死去 「もう会えない」長崎県で惜しむ声

 写真家、奈良原一高さんの訃報に、長崎県関係者からも惜しむ声が聞かれた。
 奈良原さんは、父親の仕事の関係で幼少の一時期を長崎市で過ごした。1954年、早稲田大大学院在学中に同市の端島(通称軍艦島)などを取材。この時の作品を56年、個展「人間の土地」で発表し、脚光を浴びた。
 長崎市出島町の長崎県美術館は、「人間の土地」シリーズの作品93点を所蔵。2010年、13年には奈良原さんの個展も開催している。同館の学芸員、野中明さん(50)は「現実に即しつつ、単なるルポルタージュではなく自分の世界観を写し出している。ビジュアルがとても美しい。学生の時から独特のスタイルを確立していたことは驚き」と改めて作品を評価した。
 長崎市の写真家、濱本政春さん(64)は、交友が深かった長崎ゆかりの写真家、東松照明さん(1930~2012年)、奈良原さんと一緒に2回ほど食事をしたという。濱本さんは奈良原さんの印象を「落ち着いていてクール。作品はあか抜けていて、とてもおしゃれで大好きだった」と振り返り、「もう会えないと思うと寂しい」としのんだ。

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