12年越しの五輪へ 「東京」決めた長崎県勢 カヌー・水本圭治(チョープロ、岩手県出身)

「万全の準備をして本番を楽しみたい」と語る水本(チョープロ)=長崎新聞社

 いよいよ幕を開けた東京五輪・パラリンピックイヤー。各競技で代表争いが本格化する中、長崎県勢は昨年、カヌー・スプリント男子の水本圭治(31)=チョープロ、岩手県出身=、ライフル射撃男子の松本崇志(36)=自衛隊、島原市出身=が代表権を手にした。ともに2008年北京五輪から、計4度目の挑戦でつかんだ夢への挑戦権。誰もが認める「いい人」という共通点がある2人のベテランの“今”にスポットを当てた。

 ■カヌー・水本圭治「競技人生の集大成に」

 昨年8月の世界選手権でアジア勢最上位の12位に入り、五輪切符をつかんだ。でも、12年越しの夢をかなえた歓喜の瞬間は、もう過去のこと。今、カヌー人生で初めて進む“最終ステージ”へ向けて、時間を惜しむようにトレーニングに励んでいる。夢舞台で目指すのは「一番いい色のメダル」だ。
 パワーと持久力が求められるスプリントで、出場を決めた種目は4人乗りのカヤックフォア(K-4)500メートル。日本カヌー連盟は国際的に体格で劣る日本勢が「同調性や団結力を生かして戦える」とみて、K-4の強化を重点的に進めてきた。
 大事になるのは、4人がどれだけ息を合わせられるか。いかに大きく、強く、速く漕げるか。五輪決定後も、ほとんどの時間を国内外での代表合宿に費やし、コーチの指導に沿ってフォームを固めている。
 「大きく、強く、速く」。言葉は簡単だが、これがなかなか難しい。強く漕ごうと力を込めると、漕ぎが小さくなる。大きく漕ごうとすると、体から離れたところに力を込めないといけないが、遠い場所は力が加えにくい。その漕ぎを実現させる筋力を上げていくのが、課題の一つでもある。
 加えて、それぞれが各ポジションの役割を意識して、遂行できるかがカギを握る。このところの定位置は進行方向の一番前。自分の漕ぎが船全体の漕ぎになるため、後ろのメンバーが合わせやすいように心掛けている。
 また、後ろが前のパドリングを追い越して速くは漕げないので、誰よりも最後まで漕ぎ切るスタミナも必要になる。すべての準備をやり抜くことで、日本チームの推進力を上げ、引いては目標に近づけていく。
 本番は32歳で迎える。その後の進退は未定だが、年齢的に最後の五輪になる可能性が高い。夢舞台はカヌー人生の集大成。高校から16年間を懸けてきた、その価値を証明してみせる。

 【略歴】みずもと・けいじ 岩手県出身。不来方高で競技を始め、3年時のインターハイで4冠を達成。以降、世界選手権などで日の丸をつけてきた。12年から長崎で県スポーツ専門員を務め、17年からチョープロに所属。19年の日本選手権はK-1の500メートル、1000メートルで2年連続2冠を獲得した。176センチ、82キロ。

 

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