12年越しの五輪へ 「東京」決めた長崎県勢 ライフル射撃・松本崇志(自衛隊、島原市出身)

©株式会社長崎新聞社

「いかにメダルを取るか考えて過ごしていく」と語る松本(自衛隊)=自衛隊体育学校

 いよいよ幕を開けた東京五輪・パラリンピックイヤー。各競技で代表争いが本格化する中、長崎県勢は昨年、カヌー・スプリント男子の水本圭治(31)=チョープロ、岩手県出身=、ライフル射撃男子の松本崇志(36)=自衛隊、島原市出身=が代表権を手にした。ともに2008年北京五輪から、計4度目の挑戦でつかんだ夢への挑戦権。誰もが認める「いい人」という共通点がある2人のベテランの“今”にスポットを当てた。

 ■ライフル射撃・松本崇志「出る先にある夢実現」

 昨年11月のアジア選手権で五輪代表に内定するのは、自分の中で決まっていた。目標はメダルを取ること。それを実現させるための準備はしていた。結果は日本勢最高の11位。「うれしさと悔しさと半分半分」。12年越しの夢をかなえても、素直に喜べなかった。
 課題に挙がったのは「状況を読み解く力」。一日を通して風が強い日だった。50メートルライフル3姿勢は風や光の影響を受けやすい屋外種目。中心の10点を狙っていても、弾が9点の方向にそれていく。求められるのは目で0.1ミリのずれを読み取って、ずらして撃つテクニック。「トップ選手はまるで風がないような点数を出していた」。世界との差を痛感した。
 目指すのは「メダル獲得に尽きる」。そのために悔いがないように準備をする。10メートルエアライフルの出場可能性も残っており、代表選手が決定する3月ごろまでは、両立させながら、基礎をしっかりと磨いていく。フィジカルの体幹やバランストレーニング。上からまっすぐ銃を下ろす正確な動作を、呼吸と同時に合わせていく。
 職場の朝霞駐屯地訓練場は、1964年の東京五輪で使われた射撃場跡地にある。現在、そこから数百メートル先に五輪会場が建設中。風や光は、ほぼ同じ。夏場だから、蒸し暑い。汗が噴き出し、脈も速まる。涼しい海外の射場とは違い、周りの選手は対応するのが難しい。「でも、僕は十何年も体験している。蓄積が全然違う。今ここで練習できているのは、すごく有利」。本番をイメージしながら、トリガーを引く。
 「射撃の原点は長崎」だと公言している。五輪内定が決まると、地元の仲間からも祝福のメッセージが続々と届いた。「今まで逃してきて、一緒に悔しがってくれた。やっと一つ夢がかなった。恩返しできたかな」。次第に実感が湧いてきて、すっきりとした心持ちに変わっていった。今は「出る」先にある夢に、ピタリと照準は定まっている。

 【略歴】まつもと・たかゆき 島原市出身。島原工高でライフル射撃を始め、日大を経て自衛隊体育学校に入校。高校2年時の富山国体で初の日本一に輝いて以降、計12度の国体優勝を誇る。2018年ジャカルタ・アジア大会ライフル3姿勢銅メダル、全日本3冠。19年アジア選手権で日本勢最高の11位。168センチ、67キロ。