世帯年収900万円の共働き夫婦、無理のない住宅ローンの返済額は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、もうすぐ2人目が産まれるという、世帯年収900万円の歳共働き夫婦。住宅購入を検討していますが、いまの家計で無理なく住居費にまわせる金額がいくらになるのか知りたいといいます。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

第2子が来年6月に産まれることもあり、住宅購入を検討しています。晩婚だったため、いまから教育費と老後資金を同時に備えなくてはいけない中、どのくらいを住宅費にあててもいいものなのでしょうか。二人目を妊娠し倹約に努めていますが、家計で見直せるところがあれば、ご指摘いただきたいです。

<相談者プロフィール>

・女性、37歳、既婚(夫:39歳、会社員)、2人目妊娠中

・子ども1人:2歳

・職業:会社員(時短勤務中)

・居住形態:賃貸

・毎月の手取り金額:53万円

・年間の手取りボーナス額:120万円

・毎月の世帯の支出目安:約40万円

【支出の内訳】

・住居費:12万円

・食費:5万円

・水道光熱費:1万円

・教育費:3万円

・保険料:4万円(うち貯蓄型1万円)

・通信費:1.5万円

・車両費:なし

・お小遣い:7万円

(夫:5万円、妻:2万円)

・美容・被服費:2万円

・その他:3万円(新聞代など)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:13万円

(定期:7万円、児童手当:1.5万円、つみたてNISA:2万円、iDeCo:2.4万円)

・年間ボーナスからの貯蓄額:60万円

・現在の貯蓄総額:950万円

・現在の投資総額:60万円

・現在の負債総額:なし


渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。現在、お二人目を妊娠中とのことで、おめでとうございます。また家庭が賑やかになるのが楽しみですね。

今回は、新規住宅購入のご相談です。住宅購入は教育費や老後と並んで“人生3大資金”のひとつであり、大きな買い物となります。そして住宅購入は、教育費準備や老後準備など、その他の経済的な目標と絡めて考える必要があります。

多くの方が住宅ローンを組みますが、金融機関から“借りられる金額”で考えるのではなく、借りられる金額の範囲内で“無理なく返せる金額”で検討するのが重要です。年収や将来の教育費等を踏まえた上で適正な住宅購入価格について考えてみましょう。

まずは“借りられる金額”を確認する

まず、収入の前提ですが、手取りから逆算して、ご主人様600万円、奥様が350万円程度と仮定します。まずは、借りられる金額についてみていきます。

金融機関が適正な住宅ローンを貸し出す場合、貸す相手がしっかりと返済することが可能かどうかを確認する「審査」というものがあります。まず前提条件として、ローン完済時の年齢や申し込み時の年齢、勤続年数、雇用形態などの要件をクリアする必要があります。

最低限の融資条件をクリアした上で、借りることのできる金額を審査するにあたり重要になるのが、「返済負担率」と「審査金利」です。

返済負担率とは、年収に対して、年間の返済額がどれくらいの割合かを示したもので、審査に用いられる返済負担率は、30%~35%に設定されています。

審査金利とは、金融機関が審査する際に用いられる金利のことで、店頭に表示された金利ではありません。この審査金利をもって融資する適正額を審査します。通常、3~4%に設定されています。なお、フラット35については、審査金利は実行金利がそのまま適用されるので、大きい金額の借入れを希望する場合は、フラット35の方が審査が通りやすくなっています。返済負担率は、年収400万円未満が30%以下、年収400万円以上は35%未満となります。

借入可能額の目安はいくら?

それでは、ご相談者の場合の借入れ可能額について計算してみましょう。

年収600万円、返済負担率35%とします。
600万円×35%÷12ヵ月=17万5000円/月

審査金利を4%(フラット35は実行金利)、借入期間35年で計算すると以下のようになります。

<フラット35以外>

借入額3900万円、金利4%、借入期間35年:月々17万2682円

<フラット35>

借入額5700万円、金利1.5%、借入期間35年:月々17万4525円

借入れ可能な予想額は約3900万円~約5700万円となります。金融機関によって異なり、他の要件もあるため、必ずしもこの結果になるわけではありませんが、ひとつの目安にしていただければと思います。

住宅ローンを組む場合、妻の収入合算は慎重に

では、次に返せる金額について考えていきましょう。家族構成や生活費は各家庭ごとに異なりますが、住宅ローンの返済額は、年収に対して20%~25%に抑えるのがよいでしょう。

ご相談者の場合、月々の支払は以下の範囲に抑えた方がよいです。
600万円×20%~25%÷12ヵ月=10万円~12万5000円/月

奥様が第二子出産後もお仕事を継続する場合、奥様の年収を加えて世帯年収900万円として考えると、以下の金額となり範囲は広がりますが、奥様の収入をどの程度織り込むかは慎重に考えましょう。
900万円×20%~25%÷12ヵ月=15万円~18万7500円/月

あらかじめ織り込んでいると、何かしらの理由で働けなくなってしまった場合の負担が大きくなってしまいます。

返済期間は“退職までの期間”とすること

また、ここで注意していただきたいのは、住宅ローンを組む際、返済期間を35年で組む方が多いですが、将来退職するのが65歳とすると、購入する年齢によっては、退職までの期間は35年ありません。よって、上記の返済負担率は、働いている期間で考えた方がよいでしょう。

ご相談者の場合は約25年となります。もしフラット35の金利1.5%と仮定して考えると下記のようになります。

<奥様の収入を考慮しない場合>

借入額3100万円、金利1.5%、借入期間25年:月々12万3980円

<奥様の収入を考慮した場合>

借入額4500万円、金利1.5%、借入期間25年:月々17万9971円

よって、ご相談者の場合、金融機関から借りることができる金額は約3900万円~5700万円ですが、返せる金額で考えると約3100万円~4500万円程度に抑えた方がよい計算となります。奥様の出産後の復職時期や収入見込みに合わせて、諸費用も考慮した頭金を差し引いて3100万円~4500万円程度の借入れになるような物件を探すとよいでしょう。

ライフプランを作成し貯蓄計画を立てる

現在の貯蓄率は世帯年収に対して20%強と良好な状況です。上記の借入額内に収まる物件であれば、現在の家賃と比較してそれほど負担は増えません。第二子が産まれると生活費は引き上がりますが、奥様が復職する前提で考えればある程度余裕はあると思われます。

公立であれば、子どもが小学校のうちが絶好の資産形成期です。中学や高校以降の教育費の準備ができるよう計画的に貯蓄していきましょう。そのためにも、中学から私立に行かせたいのか、公立でよいのかなど、将来の教育費準備の目安を今から考えておくのが重要です。

第二子の出産や住宅購入を機に、教育費準備、住宅ローン返済、老後の準備と、トータル的にライフプランを作成し、貯蓄計画を立てることをおすすめします。明確な貯蓄目標ができたあとに細かい家計の見直しをしていきましょう。

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