パワハラ被害23% 神奈川県職員アンケート、加害者意識とずれ

神奈川県庁

 神奈川県は21日、職員を対象に行ったパワーハラスメント(パワハラ)に関するアンケート結果を発表した。回答者のうち23%に当たる1479人が2015年度からの5年間で「パワハラを受けたことがある」と回答する一方、「パワハラをしたと感じたことがある」と答えたのは7%の426人。被害側と加害側の間に大きな意識の差があることが浮かび上がった。

 アンケートは、県職員だった男性=当時(37)=が長時間労働や上司からのパワハラを理由に自殺したとされる問題で県が提訴されたことを受け、昨年12月に行われた。調査対象は、警察職員と教員を除く一般職の職員(非常勤など含む)約1万5千人で、6320人が回答。回答率は約41%だった。

 パワハラの内容は、▽脅迫・名誉毀損(きそん)・侮辱など▽業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制など▽隔離・仲間外し・無視─の順で多かった。加害者との関係は「上司から部下へ」を挙げた人が1084人と、被害経験者の7割以上を占めた。

 被害後の行動は「何もしなかった」が633人で最多。県もパワハラの相談窓口を設置しているが、「知っているが連絡先を知らない」「知らない」の合計が80%に上り、周知不足が明らかになった。管理職が部下らにしたことがある行動は「他の職員がいる前で声を荒げて指導する」(54人)、「強い調子で叱る」(44人)など。「仕事を進める上で必要な情報を故意に与えない」(3人)というケースもあった。

 「県に求める取り組み」では▽処分の明確化▽定期的な実態把握などのアンケート調査▽相談窓口の周知─などが上がった。

 黒岩祐治知事は同日の定例会見で、「今は改善が進んでいると思っていたが、想像していたよりも多い。まだまだ道半ば。相談窓口が生かされていないことは反省し、パワハラ根絶に向けてしっかり取り組みたい」とした。アンケートは、今後毎年実施するという。

 県教育委員会も県立学校の職員に対し同様の調査を行い、対象者約1万6千人のうち5497人が回答。15年度からの5年間で「パワハラを受けたことがある」のは17.6%、「パワハラをしたと感じたことがある」のは3.5%だった。

 ハラスメント問題に詳しい一般社団法人「職場のハラスメント研究所」の金子雅臣所長は「行為者は『あなたのため』と思い、ハラスメントの自覚がないことが多い。行為者に悪意があるかではなく、被害を受けた側がそう感じたらハラスメントだという意識を高めなければ解決には進まない」とした。

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