ニュースの読み方に工夫とひと手間を加えて「投資力」を伸ばす

投資を始めると、マーケットや自分が投資した企業の株価が今後どう動くのかが気になり、情報収集をするようになるかと思います。投資を始めて少し経った人からも、よくどのように情報を集めているかを聞かれます。いまの世の中は情報が溢れて、調べることの難易度が下がっている分、玉石混交で、有用な情報をどれだけ効率的に拾い集めるかが重要です。今回は情報収集について考えていきましょう。


ネットを有効活用しよう

効率的に情報収集するにはネットの活用が重要です。昨今は新聞社や週刊誌、専門誌が紙媒体とは別に自社のメディアも持っていて、大量のニュースが速報性をもって更新されていきます。ただ、いくつものサイトを定期的に見にいくのは面倒なので、筆者はTwitterで各社の公式アカウントをフォローし、電車やタクシーで移動している最中にタイムラインを流し読み、各社の最新記事のタイトルと見出し文を見て、気になったものがあればクリックして本文を読みにいきます。

また、ここ数年で多くの個人投資家がブログやYouTube、Twitterなどで情報発信をするようになりました。なかには、金融機関に勤めている人が匿名で発信をしているケースもあるようです。これらは従来のメディアにはなかった切り口や、個人投資家ならではの有益な情報が多いため、メディアのニュースとあわせて確認してみましょう。

ただし、注意が必要なのは、従来のメディアですら、時として誤った情報や偏った記事を出すことがあります。個人が発信する情報となると、正確性がどこまで担保されているか判断が難しい部分もあります。参考にはしても、事実確認がとれないまま鵜呑みにすることはやめましょう。

数字には感覚を研ぎ澄ませ

投資に関する情報を収集していると、どうしても経済や企業業績などのニュースに触れる機会が増えていきます。そうなると、記事の中に数字が出てくるものが多いのですが、数字に対する感覚を研ぎ澄ませてしっかりと理解する習慣をつけましょう。

特に意識をしないまま記事を読み流してしまうと、数字もサラッと読み飛ばしてしまいがちですが、場合によってはその場で計算をしてみたり、数字の前提を確認すると見えてくるものがあります。

すごく簡単な例を挙げれば、「A社の営業利益が前期の1,700万円から減少し、今期は1,190万円となりました」という記事があったとします。特に数字に対しての感覚を研ぎ澄ませないで読んでしまうと、数字も文字として読んでしまい、「前年より利益が減ったのか」との感想で終わるかもしれません。しかし、少し計算をしてみると感想が変わる場合もあります。

前期からの利益の減少率を計算すると、この例の場合は3割も減少したことがわかります。「前期から利益が3割減少」と書かれていたらどう思うでしょうか? 記事に出てきた数字を自分で少し計算することで、数字の変化のインパクトを正確に理解できるようになります。

また、数字の前提を気にする習慣もつけましょう。たとえば、経済指標で「2.3%の上昇となった」と書いてあったとして、その上昇率が前月比なのか、前年比なのかで意味が変わってきます。

一次情報を必ず確認すべし

情報収集の方法や注意すべきことを簡単に説明してきましたが、どれだけ工夫をしても記事だけで情報収集を完了すべきではありません。必ず一次情報を確認するようにしましょう。一次情報とはその記事に使われている数字の原典を指します。

ちゃんとした媒体は、引用した数字の出典を明記しています。たとえば、「総務省統計局が発表した1月の消費者物価指数は~」というかたちです。こういった記事をみたら、その原典の名前を検索して、実際のデータを見てみましょう。

例でいえば、「総務省統計局 消費者物価指数」と検索すれば、すぐに指標の中身を確認できます。消費者物価指数であれば、総務省統計局が最新月のデータをPDFで詳細を掲示していますし、時系列データはCSV形式でダウンロードすることも可能です。

一次情報を確認すれば、その記事の情報が本当に正しいのかを判断できますし、それ以外にもメリットがあります。それは、記事には書かれていなかったポイントを発見できることです。筆者も記事を書く人間なのでわかりますが、文字数の制限や原稿の締め切りの関係から、全ての情報を書き上げることはできず、どうしても記事の内容が表面的な分析で終わってしまうこともあります。

一方で、自分のために分析をする場合は、締め切りもないため、徹底的に調べられます。投資の世界では、誰も気づいていないことに気付けたとき、大きなリターンを得るチャンスが生まれます。手間のかかる作業ですが、時間がある限りは一次情報を確認する習慣は必ず身に付けましょう。

紙の媒体も同時に読むことを勧める理由

ネット上の情報収集について書いてきましたが、筆者は紙媒体を同時に読むことを勧めます。特に新聞です。ネットのニュースは自分が知りたい情報だけを読んでしまう傾向にありますが、新聞の場合はさまざまな情報が紙面に載っているため、思わぬ情報に触れることができます。速報性という観点からはネットのニュースには劣りますが、自分の知識の幅を広げていくには紙媒体、特に新聞が効果的だと考えます。

労力がかかるので、必須ではありませんが、筆者は社会人になってから数年間は毎日新聞の切り抜きをしていました。気になった記事を切り抜き、注目すべき箇所はマーカーを引き、わからない言葉を調べて貼り付けたページの余白に意味を書いていく。この積み重ねで大量の知識を身に付けられたと思います。

なんとなくニュースを流し読みするのではなく、工夫とひと手間を加えることで、投資力を一気に成長させましょう。

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