韓国社会で新たに広がる“女性嫌悪”とは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。1月15日(水)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、著述家の北条かやさんが“新たな女性嫌悪”について見解を述べました。

◆韓国の世論を二分するフェミニズム小説

昨年12月17日に、世界経済フォーラムがジェンダーギャップ指数を発表。この指数は「経済」、「政治」、「教育」、「健康」の4つの項目の男女平等をそれぞれスコア化したものです。日本は前年の110位を下回る過去最低の121位で、政治分野でのスコアの低下が順位に大きな影響を及ぼしました。

日本と同様108位と下位に位置づけられている韓国では今、チョ・ナムジュ著「82年生まれ、キム・ジヨン」という本が話題になっているそうです。北条さんによると、「なんとなく女性の側が生き辛さを重ねていくということを祖母の代から淡々と描いているという話」で、多くの女性が共感を覚えるなか、アイドルが読んだことを公表すると「男性蔑視だ」とファンが激怒。さらには、映画化されると中止を求めるムーブメントが大統領府にまで及ぶなど、「フェミニズム小説が韓国の世論を二分している」と北条さん。

なぜこの本が売れているのかと言えば、「現代社会の“女性嫌悪”」
があると指摘。「今までは女性が男性より劣っているという差別が多かったが、女性が不当に恵まれているからズルいと攻撃するような新たな風潮が出てきている」
と新たな女性差別の形態を示唆します。

これは日本でもありますが、韓国では特に最近多いそう。2015年には「マーズ(中東呼吸器感染症)」を持ち込んだのは20代女性というデマがネット上で拡散。その翌年には、女性に無視されてきたと話す30代男性が若い女性を無差別に殺害する通り魔事件が起き、それを機に女性運動が勃興。そして、「その流れでこの小説もベストセラーになった土壌がある」と北条さんは言います。

また、2019年にはフェミニストとして評価されていた女優が誹謗中傷により自殺。韓国では、誹謗中傷もネットを中心に世論を騒がせています。

そうした背景には、これまでは女性の地位・人権をわかりやすい形で守る方向だったものが、「それが少し達成されたら、次は女性が恵まれ過ぎていてズルいという風潮が起きている」と北条さんは分析。

日本でもハイヒール強制を問う#KuToo運動を主宰している女性が過剰なバッシングにあうなど同様の事例がありましたが、北条さんはそれ以前にも高齢者や障害者がお金を不当に得ているのではないかという風潮があったことを挙げ、「社会が寛容性をなくしている」
と警鐘を鳴らします。

これに対し、MCの堀潤は「豊かになれば解消されるのか?」と問うと、北条さんは「実際にはもう社会はそんなに経済成長していかない。その中でどうしたら寛容性というテーマが貫けるのかは私自身答えが出ていない」と吐露。

令和メディア研究所主宰で白鴎大学特任教授の下村健一さんも、過去に生活保護に関する取材を行った際に同じような構図を散見したそうで、それを打開するには「想像力しかないと思う」と述べます。

一方、キャスターの宮瀬茉祐子は、この問題は男性vs女性であると同時に、女性同士でも二分されていることに難しさを感じている様子。北条さんもこれに同意しつつ、「恵まれていると見なした人を引きずり下ろそうとする社会になってきているところがある」
と現状を案じていました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~7:59 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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