社説[南風原町 接種通知放置]組織の問題点洗い出せ

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 前代未聞の不祥事だ。

 南風原町が、日本脳炎の定期予防接種(1期追加)の通知を2017~18年度の2年間怠り、対象となる3~7歳半の537人に届いていなかったことが分かった。このため、273人が接種を受けておらず、うち68人は対象年齢上限の7歳半を過ぎていた。

 通知の発送は毎年度末の3月に行っているが、担当する保健福祉課の職員が18年3月に通知するのを忘れた。

 驚くのは同年4月、保護者からの問い合わせで通知忘れに気づいたが、上司に報告せず放置し、さらに翌年の19年3月も通知を怠ったことだ。

 組織のチェック機能も働かなかった。

 19年4~12月の間だけでも約180件に上る問い合わせが寄せられたが、担当課で対策が取られなかった。

 担当課長が把握したのは19年10月。その際も、担当職員に通知を促しただけで、実態把握や課全体での対応策を取らず、業務完了の確認もしていなかった。

 町が重い腰を上げたのは同12月11日。「通知がきておらず、7歳半を過ぎてしまっている」と保護者から訴えがあったからだ。

 最初に気づいた時点で報告していたら…、上司が気づいた時点で課で対応していたら…。被害を最小限に食い止める機会はいくらでもあったはずだが、手が打たれないまま時が過ぎた。

 町民の命や健康を守る責任感や緊張感が、職員にも、組織にも、欠如していたというほかない。

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 日本脳炎は蚊が媒介する、東南アジアに広く分布する感染症。日本脳炎ウイルスに感染した豚の血を吸った蚊が人を吸血することで感染する。

 感染した人のうち発症するのは100~千人におよそ1人。致死率が2~4割と高い。特に幼児や高齢者はリスクが大きい。

 県内では11年に1歳児が発症して以降、発症例はないが、国内では19年に8件が報告されている。

 日本脳炎はウイルスに対する免疫をつけるワクチン接種で罹患(りかん)リスクを75~95%減らすことができるという。

 県内では近年、ウイルスの増幅動物である豚に抗体陽性が確認されており、予防接種の重要性は高い。

 定期予防接種は生後6カ月~7歳半に3回、9~13歳に1回の計4回受けるもので、537人は3回目だった。

 町は、これから速やかに接種すれば通常のスケジュールと変わりない免疫レベルまで上がるとし、21日から戸別訪問で接種を勧奨している。

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 地方公務員法は「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且(か)つ、職務の遂行に当(あた)つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」とうたう。

 赤嶺正之町長は「チェック機能が働かなかったのは組織に欠陥があると思う。検証し、職員の研修を含め、もう一度やり直す必要がある」と語った。町が生まれ変われるのか、注視したい。

 他自治体も「他山の石」として、仕事を見直すきっかけにしてほしい。