<再ブレーク盤> 木梨憲武『木梨ファンク ザ・ベスト』 一流エンタテイナーと納得の初ソロ・アルバム

木梨憲武『木梨ファンク ザ・ベスト』

 とんねるず、野猿としてもヒット実績の多い木梨憲武の初となるソロ・アルバム。多くの有名ミュージシャンの参加を木梨自身が取り付けたそうだ。

 全10曲中、B’zの松本孝弘がギターで参加した『GG STAND UP!!』、星野源が作詞、久保田利伸がボーカル共演した『OTONA』、藤井フミヤが作詞した『チョイ前LOVE』などファンキーな楽曲は、彼の粘り気のある歌声とも相性が抜群だ。それでいて、『チョイ前LOVE』では、コミカルなトークも入れて、不倫色を曖昧にしているのも上手い。また、AIとの『夢の先へ』やSALUとの『OH MYオーライ』、AKLOとの『麻布十番物語』など、ヒップホップ系の実力者達とコラボした楽曲は、彼らのナビが上手いのか木梨の声も瑞々しさがあり50代とは思えぬ色気がある。

 その中で要となるのは、やはり家族とのエピソードを赤裸々に綴った自作詞の『I LOVE YOUだもんで。』と『道化師として』の2曲だろう。特に『I LOVE YOU~』は、ダメな自分を晒しつつ「成美さん」と連呼し、「同じ墓に入るよ 私決めてる あきらめて」と、ソウルフルに歌い上げる。自慢と自虐のバランスも絶妙で、やはり一流のエンタテイナーは違うなと感心した。

 ラストは、スウィング・ジャズの演奏にビシっとキメて歌う『Laughing Days』でこれも聞き惚れる。本作を聴けば、真面目であれ遊び人であれ、周囲に愛されているかどうかが重要だとあらためて実感するはず。

(ユニバーサル・通常盤 2200円+税)=臼井孝

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