【1月22日付編集日記】着物をふすまに

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 歩んできた人生を折に触れて振り返るきっかけは、人それぞれだろう。和装を好んだ作家の幸田文さんの場合、それは自宅にある着物を見ることだったようだ

 ▼生活が順調だった時の着物は質も良く、楽しい記憶とともに残されている。一方で貧しい時の着物には、その当時はどう思っていたかは別にして「のちのちになってのその懐しさは、なんともいえない味の深いもの」があるとしている(「幸田文きもの帖」平凡社)

 ▼喜多方市シルバー人材センターが、今年から新たな取り組みをスタートさせている。利用者の家にある使わなくなった着物や帯などをリメークし、ふすまに張り付ける表具サービスだ。料金は1枚6千円前後を想定している

 ▼表具の技術を持ったセンターの会員が、利用者と一緒に着物や帯の柄に合わせたデザインを考え、オンリーワンのふすまに仕上げる。掛け軸や額縁に入れた和のインテリアへの加工や、遠くない地域であれば市外の出張も引き受ける

 ▼各家庭で大切に保管している着物には自分のものもあれば、親から子へと伝わってきたものもあるだろう。生活空間の中に、着物に詰まった悲喜こもごもの思い出を形を変えて残し、伝えていく粋な試みだ。