【1月22日付社説】高齢者への虐待/介護する人の負担軽減図れ

©福島民友新聞株式会社

 県内で2018年度、高齢者が家族や親族から受けた虐待件数が前年度比75件増の335件に上り、過去最多を更新した。相談・通報件数も同107件増の542件で最多となった。

 虐待の内訳をみると、たたくなどの暴力行為を加えたり、縛り付けて拘束したりするなどの身体的虐待が最も多く、226件あった。次いで暴言などの心理的虐待が158件、介護の放棄が68件、財産の不適切な流用など経済的虐待が55件となっている。

 県は、高齢化が進んだことと、高齢者への虐待という課題への理解が進んでいることが相談・通報が増えた背景にあるとみている。また、介護支援専門員や警察からの相談が増加傾向だが、相談や通報に結びつくのは虐待の一部にとどまっていると分析している。

 虐待は高齢者の人権を侵害する行為だ。県や市町村には、高齢者の命と権利を守るため、現状を細かに分析し、早期の発見、対応につなげることが求められる。

 虐待の背景にあるのは、介護の負担だ。県によると、虐待を受けた人は、要介護の認定を受けている人が多い。介護が必要な状態ではあるものの、自分で動けたり、考えたりできる段階の高齢者への虐待が目立つという。

 虐待を加えているのは、息子が170人で全体の半数以上を占めている。県は、息子などによる虐待の多くは、介護疲れや、高齢者とのコミュニケーションがうまくいかないことなどによるストレスが背景にあるとみている。虐待防止には、介護する家族の負担、ストレスの軽減が不可欠だ。

 県社会福祉士会の松本喜一会長は、介護する側の負担を軽くするには「自分が今、介護を行っていることをオープンにすることが大切となる」と指摘する。介護を行っていることを周囲に知ってもらうことで、助けを受けやすくなったり、心理的な負担が軽減されたりする効果が期待できるという。

 ただ、介護をしていることを明かしたがらない人も多い。地域の人々が高齢者のいる家庭に目配りし、外から助けの手を差し伸べることも必要だ。

 各市町村は、高齢者福祉の総合的な窓口として地域包括支援センターを設けている。高齢者や家族の悩みに応じたアドバイスを行ったり、適切な福祉サービスを紹介したりするほか、虐待の未然防止の役割も担っている。各センターは、高齢者本人に加え、高齢者を養護する家族の実情に配慮し、きめ細かいアドバイスやケアの提供に努めてほしい。