2020年は“庭庭(にわにわ)元年”!? チェルシー・フラワー・ショーへの出展を決意! 石原和幸さん(庭園デザイナー、景観アーティスト)からのメッセージ 「夢はあきらめずに追いなさい!」

ガーデニングの世界的権威

石原和幸さん(庭園デザイナー、景観アーティスト)からのメッセージ

世界最高峰のガーデニングショー「チェルシー・フラワー・ショー」(英国王立園芸協会主催)で11個ものゴールドメダルを受賞してきた石原和幸さん。2016年には『チェルシー・フラワー・ショー』のすべての部門を合わせた約600もの庭のなかで総合1位(プレジデントアワード)を受賞。まさにガーデニングの世界的権威だ。

 ウェスティンホテル東京や羽田空港第1旅客ターミナル出発ロビーの庭園を手がけたほか、中国や韓国など海外でも多くの庭園を造ってきた。 5月に開催される2020年の「チェルシー・フラワー・ショー」への出展も早々に決めており、その意欲は衰えることがない。

 そんな石原さんだが、決して順風満帆にキャリアを積んできたわけではない。それでも夢をあきらめなかった石原さんが、経験を交えながら、挫折して挫けそうな人、夢を追う勇気がなくくすぶっている人にメッセージを送る。

 

~借金8億円からの挑戦

「僕が『チェルシー・フラワー・ショー』に挑戦しようと思ったのは、実は多額の借金を背負ったのがきっかけです。41歳のときに大手商社と合弁会社を設立し、生まれ故郷・長崎から上京したのですが、43歳のときに8億円もの借金を背負って、いったん長崎へ戻りました。借金は365日、休みなく毎日、毎日庭を造って、約10年かけて返済しましたが、借金を返しながら従業員の給料を払い、僕自身の家族を守るのはとても大変でした。毎日がとても苦しく、夢がないと耐えられないと思ったんです。

~『チェルシー・フラワー・ショー』との出会い

そんなとき、チェルシー・フラワー・ショーに出会いました。実際に観に行くと出展あれている庭の素晴らしさに感動し、「よしこれに挑戦しよう!」と心が躍りました。でも「チェルシー・フラワー・ショー」は出展するだけでも簡単ではありません。企画書が審査を通らないと出展できませんし、出展するには5000万円もの費用がかかります。必死で働きながらお金を貯め、2004年に初出展。シルバーギルト(銀メダル)を受賞しました。

~『チェルシー・フラワー・ショー』で総合1位を受賞

その後も挑戦を続け、昨年までにゴールドメダルを11個、2016年には『チェルシー・フラワー・ショー』のすべての部門を合わせた約600もの庭のなかで総合1位(プレジデントアワード)を受賞することができました。なぜこれほどの結果を出せたのか。庭が本当に好きだから。それに尽きると思いますね。アイデアが次々とわいて止まらず、毎年、ショーの準備をしているときは「大変だから、もう来年はやらない!」と思うのですが、終えて帰る頃にはまたやりたくなってしまうのです。

~長崎の大家族で育った原風景、、、小さな目標の大切さ、、、

僕は庭について専門的な教育を受けたことはありません。家は農家で、子供の頃は学校の勉強も得意ではなかった。でも、長崎の小さな町で、たくさんの花や木に囲まれ、大家族で育った原風景が僕の中にあります。そこで、僕は毎日ワクワクしながら暮らしていました。モトクロスのプロレーサーが夢だったのですが、大学時代に視力が落ちて断念。大学卒業後、華道家元『池坊』に入門して花の素晴らしさに目覚め、路上販売の花屋で修業を始めたのがスタートでした。そのときは『いつかは店をもつぞ』というのが目標。小さくてもいいので、目標をもつことが大事ですね。夢や目標に日付をつけるのもいいでしょう。そして公言する。そうすれば、その夢に向けて自分自身も周りも動ていきますから。

~笑顔、驚きが嬉しくて…お客さんの願いをかなえるために奔走

最初は「花屋はもうかるらしいぞ」という友達の話から興味をもったのですが、いざ始めてみると、花を前にした人たちの「おおっ!」という笑顔、驚きが嬉しくて、もっと驚かそうと思ってがんばるようになりました。恋人に3000円の花を届けたいというお客さんの願いをかなえるために、長崎から福岡まで160キロの一般道を車で往復したこともありました。それを受け取った人の喜びの涙は、僕の大きな喜びになりました。お客さんに喜ばれて僕ももうかる、っていい仕事ですよね。

~“好きなもの”がビジネスに結びつく

まず好きなものを見つけること。その好きなことを突き詰めれば、その延長でビジネスに結びついて、続けていけば達成感も生まれます。くじけそうになったときは、いったんくじけて落ち込めばいい。僕も落ち込む時はあります。そういう時は「アホ!」「タコ!」と1人で悪態をつけばいい。失敗はする、人が寄ればもめ事もある。でも、時間が解決します。だから、今まさにつらいことに直面している人がいたら、「死ぬなよ」と伝えたい。生きていれば、何とかなるのですから。

~長崎に“世界一の庭”を造る!

今、長崎市郊外に5000坪の世界一の庭、楽園のような美しい庭を造っています。一部を4月にオープンするのですが、ここを中心に長崎を花の聖地にしたい。古民家の空き家にいろんなタイプの移住者を100人呼び、僕が生まれ育った原風景が蘇るような、面白い街を作りたい。そして、海外の人にも来てもらいたい。

 今年は2020年なので“庭庭元年”、日本に世界一の花と緑の文化を復活させたい――そんな夢を温めていると、何歳になってもドキドキできるんですよ」

                          ライター:中野裕子

 

石原和幸:プロフィール

1958年1月14日、長崎市生まれ。久留米工業大学卒業後、地元の自動車販売会社に就職。1年で退職し花屋に弟子入り。29歳で独立し大成功したが、東京進出に失敗しいったん帰郷。再起を目指し2004年、46歳で「チェルシー・フラワー・ショー」挑戦。これまで11個のゴールドメダルを獲得した。2008年、株式会社石原和幸デザイン研究所を設立し東京再進出。現在は国境を股にかけて庭園デザイナー、景観アーティストとして活躍中。

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