豪州西部に残るクレーター、22億年前の衝突による古いものだった

大小無数のクレーターが残る月ほどではありませんが、地球の表面にも幾つかのクレーターが残されていて、その一部は形成された年代が判明しています。今回、オーストラリアに現存するクレーターが、確認されたものでは最古となるおよそ22億年前に形成された古いクレーターだったことが明らかになりました。

■長年の浸食を受けてサイズは元の1/3程度に

Timmons Erickson氏(ジョンソン宇宙センター、NASA)らの研究チームが年代の特定を試みたのは、西オーストラリア州にある「Yarrabubba(ヤラババ)」と呼ばれるクレーターです。ヤラババ・クレーターはもともと直径70kmほどのサイズを持っていたと考えられていますが、長年に渡る浸食作用を受けてクレーターらしい地形は失われ、現在は幅20kmほどの痕跡しか残っていません。

研究チームは、ヤラババ・クレーターの中心付近に残った「Barlangi rock(バーランギ・ロック)」と呼ばれる小高い丘からサンプルを採取。サンプルに含まれていたジルコンモナザイト(モナズ石)といった鉱物が天体衝突の衝撃で融けたのちに再結晶化した年代を測定したところ、その時期が約22億2900万年前(誤差プラスマイナス500万年)であることが判明しました。

地球に現存する衝突クレーターのうち年代が判明しているもので最古のクレーターは、約20億年前に形成されたとみられる南アフリカ共和国の「フレデフォート・ドーム」(直径200km以上)でした。今回のErickson氏らの研究により、ヤラババ・クレーターはフレデフォート・ドームよりもさらに2億年古い、現存する衝突クレーターでは最古のものであることが明らかになったのです。

■地球の全球凍結に終わりをもたらす一撃だった?

注目は衝突が起きた時期です。この頃の地球は南北両極から赤道に至るまで全体が凍りつく「全球凍結」(スノーボールアースとも)の時期にあたりますが、研究チームによると、ヤラババ・クレーターが形成された年代は全球凍結が終了した時期に一致しているといいます。

研究チームは、この衝突によってクレーターが形成されただけでなく、雪や氷が蒸発したことでおよそ5000億トンの水蒸気が大気中に放出されたものと試算しました。水蒸気は温室効果ガスの一種であることが知られており、衝突によって生じた水蒸気が温室効果をもたらした結果、当時の全球凍結が終わりに向かったのではないかとしています。

研究に参加したAaron Cavosie氏は、既知のクレーターが形成された正確な年代を知ることの重要性と、侵食を受けて消滅したと考えられている太古のクレーターが今も現存している可能性を指摘しています。

Image Credit: Graeme Churchard
Source: NASA/ カーティン大学
文/松村武宏

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