<レスリング>【全日本マスターズ選手権・特集】ポーランドから3選手が参加、本格的な国際大会に成長するか

闘いを求めて来日したポーランド・チーム

 2016年に外国人選手の参加を解禁し、国際大会へと変貌した全日本マスターズ選手権。1月19日に行われた今年の大会には、翌20日にポーランドのモラビエツキ首相が来日するのに合わせたわけではないだろうが、初めてポーランドから3選手が参加。日本の“おもてなし”に感激し、「来年以降も来たい」と継続参加を望んだ。

 来日したのは、F(61~65歳)100kg級のズドジスタウ・ブルゾウスキさん(65歳)、同130kg級のスタノスラウ・アンドレイ・カミンスキさん(64歳)、G(66歳以上)130kg級のジャヌス・ズラウスキさん(67歳)。いずれも若い時はポーランドのトップ選手で、その後は世界ベテランズ選手権へ参加してきた選手だ。

 これまで外国選手の参加といえば、米軍基地の隊員など日本在住の選手の参加や、知り合いの日本人の橋渡しがあっての来日がほとんどだった。ポーランドと言えば、東京オリンピックに際して、登坂絵莉選手(東新住建)の出身地の富山・高岡市が女子レスリング・チームとホストタウン契約を結んでいるが、今回の3選手は、日本ではベテランの大会が盛んに行われていることをポーランド協会を通じて知り、そのつながりとは別に、「ぜひ参加したい」と日本行きを決めたという。

「日本がさらに好きになりました」と話すズドジスタウ・ブルゾウスキさん

 ブルゾウスキさんは「日本は歴史があり、美しい国。人も優しいと聞いている。レスリング選手は全員が家族だと思っているので来た」と話し、海を越えてやってきた理由を説明する。全日本マスターズ連盟のウェブサイトには、英文による大会要項も掲載されており、大変助かったと言う。

 全員が100kgを超える重量級選手。日本は軽中量級が中心なので、3選手ともエントリー1選手という組み合わせとなったことは残念。しかし、他階級の選手と特別試合が組まれ、現在でも東京・安部学院高校で現役バリバリの選手と激しい練習をしている鈴木光・元全日本女子チーム監督らと手合わせし、たっぷり汗をかいた遠征となった。

 「飛行機に16時間乗ってきて、時差が8時間。まだ時差ぼけもありましたので、大変でしたね」。日本に重量級の選手は少ないことは承知済み。それでも特別試合が組まれて試合をやらせてもらった思いやりに感謝。何人もの人から「よく参加してくださいました」との声をかけられ、「日本人のこういうところが大好きです」と話した。

ポーランドでも盛んなベテランズの大会、「日本も招待したい」

スタノスラウ・アンドレイ・カミンスキさんは、“ベテランズ最強”の一人の鈴木光さんにフォール勝ち

 ポーランドでも、ベテランズの大会は行われており、年に1回はロシア、ブルガリア、ルーマニア、セルビア、トルコ、イタリアなどの選手が集まっての大会が開催されているという。米国とも交流があり、ラスベガスでの大会にポーランドの選手が行き、逆に米国の選手がポーランドに来て試合をしたりもしているとのこと。

 日本とつてができたので、「日本にも招待状を出したい。ぜひ来てほしい」と希望する。2年前に世界ベテランズ選手権から60歳以上の部がなくなったが、ポーランドの大会は日本と同じで、そのカテゴリーの試合もある。「ぜひ来てください」と熱望した。

 安全上の理由により、世界レスリング連盟(UWW)は60歳以上のカテゴリーを廃止したが、来日した3選手の闘いぶりを見る限り、60代でも、70代でも、闘えそうな選手は世界でも多くいそう。世界のベテランズに、新たな動きが起こるか。

 

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