店主は都内からの移住者 弁当店を継ぎ「昼食難民」救う 

好評を呼んでいる弁当店「わくや」=三浦市三崎町諸磯

 神奈川県三浦市内の空き物件にお試しで居住する市の事業を利用して移住した涌井孝一さん(50)=同市天神町=の弁当店「わくや」が好評だ。地元の高齢女性が営業していた店を引き継ぎ、昨夏リニューアルオープン。「移住の成功モデル」になって三浦への移住促進に一役買いたい思いも抱きながら、「一人でも多くの人に食べてもらえたら」と張り切っている。

 同市三崎町諸磯の住宅街にひっそりと建つ「わくや」は木造平屋、広さ10畳ほどで、目印は黄色い外壁と赤いのぼり。旬の地場産食材を使った日替わり弁当(500円)のほか、看板メニュー「ローストビーフ丼」や総菜などを販売している。

 三浦の海に引かれていた涌井さんは、市の事業「トライアルステイ」を利用して2018年夏の2週間、滞在。12月には都内から同市天神町へ移住した。当初はすしの出張料理人を務めていたが、近所で弁当店を長く開いてきた高齢女性がけがをし、営業できなくなった状況が耳に入った。

 周辺は高齢者や単身世帯が多く、「昼食難民」となって困っている人が多いと知り、「地域の人に喜んでもらえたら」という思いが体を動かした。数カ月かけて自力で清掃や機材の入れ替えなどを済ませ、昨年7月にオープン。平日午前10時~午後2時に営業し、弁当は一日平均70食ほどを売り上げている。

 「自然豊かな三浦を多くの人が訪れるきっかけづくりをしたい」。今後は空き家を活用した宿泊業に乗り出すことも考えているという。

 問い合わせは、わくや電話070(4208)1657。

◆トライアルステイ

 人口減と空き家増加の現状を改善するため、三浦市が2015年度から始めた事業。市内の空き物件に短期間住んで、移住につなげてもらう。19年度の場合、希望者は7万円程度を払い、3~4週間滞在。18年度末までに88世帯が参加し、20~40代の5世帯の完全移住などにつながった。

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