串カツ田中、“尻すぼみ決算”に株式市場もガッカリ?

串カツ田中ホールディングスが1月14日、2019年11月期の決算を発表しました。結果は、売上高が前期比30.6%増と大きく伸びた一方、本業の儲けを表す営業利益は同8.1%増と小幅な伸びにとどまり、当期純利益は同3.1%減と前期を下回りました。

それでも、期初時点の計画よりはすべて上ブレて着地しました。多くの外食産業が苦戦を強いられる中、立派な成績ではあります。しかし、この結果に対し、株価はほとんど反応しませんでした。決算発表と同時に、投資家ウケが良い自己株取得の実施を発表しているにもかかわらず、です。

この会社は月次の売上高、客数、客単価を毎月上旬に発表しています。11月の実績は昨年12月4日公表の月次実績でわかっていましたから、決算に関しては株価にはすでにこの時点で織り込み済み。本来なら、自己株取得を材料にもう少し上がっても良いはずでした。

串カツ田中の成長にかげりが見えているという報道も目立ちます。この成績でも厳しい評価を受ける――。それだけ市場の期待値も高かったということではあるのですが、串カツ田中に今、何が起きているのでしょうか。


前期は第4四半期に急ブレーキ

まずは年間の売上高、営業利益、当期純利益の実績を追ってみましょう。上場は2016年9月ですので、上場直前期から追ってみると、きれいな右肩上がりです。

しかし、これを四半期ごとに切り出してみると、少々違う姿が浮かび上がります。四半期実績は上場後から開示が始まっていますので、2017年11月期から3期分を追ってみました。

外食産業は通常、12月が書き入れ時なので、3月期決算会社なら第3四半期、12月期決算会社なら第4四半期の山が一番高くなります。しかし、串カツ田中は11月期決算のうえ、積極的な出店を行っていますので、四半期ごとでも売上高はほぼ右肩上がりです。

もっとも、営業利益に関しては材料費や人件費の高騰があるので、完全な右肩上がりというわけにはいきません。ですが、2019年11月期の第4四半期はこれまでと様相が異なりました。

台風被害の10月よりも11月が落ち込む

第4四半期の売上高が第3四半期の実績を下回ったうえに、営業利益と当期純利益には明らかに急ブレーキがかかっています。売上高総利益率は変わっていないので、売上高が減った分、人件費など販売費の固定費部分の負担が相対的に重くなってしまったのです。

串カツ田中の第4四半期は9~11月です。月次の売上高実績を見てみると、2019年9月は前年同月比29.6%増でしたが、10月は同18.6%増。11月はさらに下がって同15.5%増でした。

既存店の数字はより深刻です。9月が同6.5%減、10月が同8.2%減、11月は同11.9%減。台風の影響を受けたはずの10月よりも、天候はまずまず安定していた11月のほうが厳しい結果だったのです。

11月の月次を発表したのは昨年12月4日ですが、5日以降、株価は4~5%下落しました。既存店が100%を下回る状況は昨年3月から続いており、特段の理由もない11月の数字が10月以上に厳しかったことに、市場は反応しました。既存店がせめて前年同月比5~6%減くらいで行かないと、新規出店も含めて3割増収を達成できないからです。

急失速の理由は?

第4四半期に失速した原因について、会社側も確信を持って分析できているわけではありません。消費増税の影響、大きなキャンペーンを打っていないなど、さまざまな原因が複合的に作用したのではないかとみているだけです。

1月8日に開示された12月の月次売上高は、全社で前年同月比25.6%増、既存店で同3.7%減と、10月、11月に比べるとだいぶ回復していますが、これも何が決め手になっているのかはよくわからないそうです。

串カツ田中は2018年6月、同業他社に先駆けて全席禁煙を実施。ファミリー層の取り込みに成功しています。当時はメディアも盛んにそのことを取り上げたので、2018年中盤以降の好調はメディア露出のおかげもあるそう。2019年はその反動が出ているわけです。

ファミリー層は休日の客数増には大きく貢献していますが、一方で平日のビジネスマンの客数が減ってしまいました。ビジネスマン需要の回復に向けて、ドリンクのWEB定期券など、お得感のあるチケットの投入でテコ入れを図っていますが、喫煙OKに戻すつもりはまったくありません。

4月からは東京都の受動喫煙防止条例が施行されますので、たばこが吸えないことを理由に串カツ田中に来なくなった人がいたとしても、他の店でも吸えなくなるので、戻ってくる可能性があります。ただしその分、現在のような休日のアドバンテージを維持できるかどうかわかりません。いずれにしても、串カツ田中にとっては4月以降が勝負といえそうです。

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