鳴門海峡が眼前に 徳島・四国観光のベースにしたいリゾートホテル

全国各地にある注目ホテルの魅力を深掘りする連載。今回は観光エリアとしても最近注目されている徳島県・鳴門のリゾートホテルです。


大阪からバスで3,000円

東京に在住していると四国は遠いイメージを持ちます。空路でのアクセスが一般的でしょうし、新幹線なら岡山で在来線に乗り換え、瀬戸大橋を渡って辿り着けるエリアという印象。ところが、関西在住の友人に言わせると「四国、中でも徳島はとても行きやすい」といいます。

もちろん地図を見れば隣ということはわかりますが海をはさんでいますし、徳島なら飛行機を使う距離でもなさそう。反面、鉄道ならかなり遠回り。友人に言わせると「大阪から徳島なら高速バスの利用がすこぶる便利」とのこと。明石海峡大橋を渡り淡路島を通過するルートは早くて安いといいます。

大阪からはバスのアクセスで意外に近い四国の玄関

早速調べてみると徳島・鳴門までなら約2時間、片道2,000円ほどでアクセスできることがわかりました。さらに調べてみると鳴門の海に面したリゾートホテルへ直行するバスがありました。しかも往復で3,000円。宿泊もリーズナブルに予約できたことで、大阪仕事のついでにホテルリサーチも兼ねて足をのばしてみることに。

あれは外資系ホテル?

徳島をはじめ四国へは何度も出向いたことはありますが、東京からなのでほとんど飛行機。バスの高い位置から望む明石海峡大橋や大鳴門橋からの眺望は新鮮で感動的。快適なバスのシートに眠くなるかと思いきや、絶景の連続に眠くなる暇もなくアッという間の四国入りとなりました。

高速を降りて海岸線を走ると見覚えのある大きなホテルが迫ってきました。目的のホテルのようです。あれ?ルネッサンスホテルではないだろうか。鳴門のルネッサンスホテルへはあいにく出向いたことはありませんでしたが、ホテルの前は何度か通ったことがあるのでなんとなく覚えていました。バスがホテルへ入っていきます。

到着し看板を見て確信。荷下ろししていたスタッフに聞くと、ルネッサンス リゾート ナルトが2019年4月にリブランドして「アオアヲ ナルト リゾート」という名称に変わったとのこと。予約する際、初めて聞く面白い名称のホテルという印象がありましたが着いて納得しました。

全体的に少し古い印象

リブランドホテルではありますが、建物自体は1991年の開業から30年近く経過しています。そこかしこに経年感はありますが、同じホテルでも30年経ったビジネスホテルのイメージと比較するとそこは贅沢に造られたリゾートホテル、要所要所がリニューアルされており全体的には好印象。客室も使いやすく整えられており、海の眺望もあいまって非日常感ある時間が過ごせます。また、クローゼットにはアイロンとアイロン台がセットされている辺りも滞在を意識していることがうかがえます。

特にバブルの頃に誕生したような贅を尽くした広大なハードを維持するのは、大変な努力が必要です。たとえリブランドといえども全体を一気にリニューアルするのは現実的ではなく、段階を追って変えていくということになるでしょう。全て大満足というわけにはいきませんが、その分お得に利用できるのであればポイントを押さえたリゾートホテルライフをゲスト各々がアレンジするのもホテル旅の楽しみかもしれません。

リゾートホテルと温泉

温泉のある宿泊施設といえば旅館をイメージしますが、個人的に注目しているのがリゾートホテルの温泉施設です。情緒という面では温泉旅館に分がありますが、設備の充実度でいうならばリゾートホテルでも注目の施設があります。アオアヲ ナルト リゾートの温泉もかなりポテンシャルが高いでしょう。ホテルのロケーションからして鳴門の海が望めることは大前提として、露天風呂・展望風呂と4ヶ所の異なる風呂が愉しめます。

1Fの露天風呂「縹(はなだ)」には「椿の湯」と「檜の湯」が。岩石で造られた和風の露天風呂で、鳴門海峡を眼前に望みつつ潮風に吹かれながらリラックスタイムが過ごせます。季節によっては淡路島より昇る朝日が望めます。8Fの展望風呂「瑠璃(るり)」には「草木の湯」と「柑橘の湯」があります。高所から眼下に広がる海を眺めながらの温泉時間。いよかん、はっさく、甘夏、すだちなど徳島産の季節の柑橘が浮かぶ癒しの湯が愉しめます。

泉質はナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉。肩こり、神経痛、疲労回復、冷え性、美肌他に効能があります。また、脱衣所に充分なタオルが備えられているのはストレスなく利用できる大きなポイントです。

レストランのバラエティもリゾートホテルの格

アオアヲ ナルト リゾートには5つのレストランがありますが、それぞれ個性的で滞在を飽きさせません。いくつかみてみましょう。

「阿波郷土料理 彩」は、阿波の國の城下町をイメージしたブッフェレストラン。ホテルのブッフェはいまや定番ですが、リゾート地へ行くとご当地ならではの食材やメニューが愉しめるのが嬉しい点。こちらはメニュー、提供方法などに工夫があり高レベル。

「フランス料理 フォーシーズン」は最上階にあるホテルのメインダイニング。ディテール、調度品など質感の高さが光ります。近海の海の幸、阿波野菜などふんだんに用いた一皿一皿に感動しつつ優雅な時間が過ごせます。

個人的なイチオシが「炭火焼 海風」。プールサイドのレストランです。阿波尾鶏や阿波牛、鳴門鯛に大浅利などご当地食材を直球勝負で味わい尽くす時間は、阿波の地にいることを実感できます。

ホテルのロケーションから海の眺望もごちそうというダイニングもありますが、当然とはいえ夜は海が望めないので、決して窓側の席が上席ではありません。念のため。

体験・観光

地方の旅館やリゾートホテルでブームともいえるのがイベント体験。ご当地の文化などに気軽に触れられる機会とあって大人気ですが、アオアヲ ナルト リゾートでは“昔の阿波へタイムスリップ”をテーマに阿波の城下町をイメージした「阿波の國」で、伝統工芸、縁日など体験できます。

また、徳島といえば観光県としても存在感を高めており、阿波踊りや鳴門のうず潮などが定番という中、最近では大塚美術館のブームなど新しい観光コンテンツも増えています。アオアヲ ナルト リゾートからは、大塚美術館や渦の道(大鳴門橋の橋桁内(車道の下)に造られた海上遊歩道)まで車で5~10分ほどと好アクセスです。


ホテル活況の今、各地に個性的な宿泊施設は誕生していますが、様々なシーンに対応でする“揃った”リゾートホテルに出会えることは稀です。往時に贅を尽くして建てられたホテルは、痒いところに手が届く懐の深さで快適性の高さを享受しつつも非日常感あるステイが愉しめることでしょう。

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