書道 自由に楽しんで! 長崎市出身で金沢大の伊東さん サブカルイベントで体験サポート

サブカルチャーイベントの会場で書道パフォーマンスをする伊東さん=長崎市茂里町、県総合福祉センター

 「無駄!無駄!無駄!無駄!」-。人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の主人公の決めぜりふが、半紙を黒々と埋めていく。昨年12月22日、長崎市茂里町の長崎県総合福祉センターで開かれたサブカルチャーイベント「気分は上々」(実行委主催)の書道体験ブース。華やかな衣装のコスプレーヤーらが興味深げに見守る中、ダイナミックな筆遣いでパフォーマンスを披露するのは金沢大書道研究会事務局長の伊東秀晃さん(45)。体験ブースを開設した伊東さんは「若者らに書を自由な感覚で楽しんでほしい」と話す。

 ■コラボを模索

 伊東さんは長崎市出身。小学1年生の頃から書道を習い始め、毛筆4段、硬筆4段。地元の高校を卒業後、金沢大に入学し書道部に入部した。在学中、友人から金沢で開かれているサブカルチャーのイベントに誘われ、漫画やアニメに興味を持った。そのうち、自分が得意な書と、サブカルとのコラボレーションを模索するようになったという。
 卒業後は、仕事の都合で福岡市に移住。現在は金沢大書道研究会の事務局長を務める傍ら、書の魅力を若者に広めようと、福岡など全国各地のサブカルイベントに参加し、書道体験ブースを開いている。長崎県では昨年8、10月に「気分は上々」のイベントでブースを開設。半紙と筆を用意し、来場者が自由なテーマで作品を書けるようにすると、若者らが集まり漫画やアニメのタイトル、キャラクターのセリフなどを書いて楽しんだ。
 中には「書道オタク」もおり、「彼らに唐代の楷書『雁塔聖教序(がんとうしょうきょうじょ)』や『九成宮醴泉銘(きゅうせいきゅうれいせんめい)』などが掲載されている古典の参考書を見せると感激していた」と話す。

 ■伝達力がある

 12月のイベントでは、コスプレーヤーらが自ら書いた作品をボードに貼り、記念撮影するなどして書に親しんだ。「せっかくなら格好よく、きれいに書いてもらいたい」と、筆遣いや言葉に合った書体などを伊東さんは来場者にアドバイス。逆に学ぶ点もあるという。「最近の若者が好む言葉は、感情などを端的に表現しており、伝達力があり感心する」
 「書道は義務教育で学ぶため、若者に抵抗なく受け入れられる一方で、古典的で硬いイメージはある」とした上で「書が若者にとって自由で、より良い自己表現の手段となるように、これからもサポートしていきたい」と意気込む。

キャラクターの名前を書いた自筆の作品を手に写真に納まるコスプレーヤー

© 株式会社長崎新聞社