人間ではない“アレ”のミイラが! 先祖から代々受け継がれてきた「三本指のミイラ」の正体とは|Mr.tsubaking

昨年末から、上野にある国立科学博物館で開催されている特別展「ミイラ」が人気を博している。同展の目玉の一つが、福島県のお寺に祀られているミイラ(即身仏)であり、この連載では昨年夏に現地のお寺へ出向いた記事を書いた。

ミイラといえばエジプトのイメージが強いが、実は日本にも多い。人気のミイラ展の会期中ということもあり、今回は日本のミイラをもう一体ご紹介することにする。

場所は佐賀県伊万里市。長崎県にもほど近い海に面した場所に、一軒の酒蔵がある。

ミイラがいるのはなんと酒蔵なのだ。

「松浦一酒造」という名の造り酒屋で、空にスッと伸びた煉瓦造りの煙突が目印。

正徳6年(1716年)の創業だという、実に300年以上の歴史を持つ古い酒蔵で、渋い建物の作りがそれを物語っている。

中へ入ると、酒を作るのに使う道具や大きな酒樽が展示してあったりするなど、資料館のような様相も呈す。

その奥にある、こちらで作られた様々なお酒を販売しているコーナーを通り過ぎ、さらに奥へ進むとそこにミイラが居る。

榊と注連縄で恭しく祀られているのは、ギョロリとした眼窩が人間よりも大きく両側に広がってついており、上向きの鼻腔骨と歯が剥き出しになったミイラで、人間のものではない。頭頂部が大きく窪んでいることからもわかるが、これは「カッパのミイラ」だ。

大きさはおよそ70~80cmくらいで、背骨とからは16の骨が突き出して甲羅のようになっており、何より足の指が3本しかないことから、どう見ても人間の子どもではないのがわかる。

どうしてここに、カッパのミイラがいるのか。

この酒蔵には、代々の当主から当主へ語り継がれる話があった。それは「我が家には何か珍しいものがある」というもの。

しかし17代続く中で、それが何を意味するのか不明のままだったという。それが、およそ60年前、母屋の屋根がえの時に大工の棟梁が「梁の上にこんなものがくくりつけてありました」と、あるものを持って降りてきた。

ボロボロになって埃だらけだけれども、とても丁寧に紐でくくられた箱で、蓋を開けてみるとなんとも不思議な形をしたミイラが出てきたのだ。埃を払うとその箱には「河伯」という文字が書かれおり、当主は大変驚きいろいろ調べたが、箱の文字が“カッパ”を意味するということ以外手がかりは見つからなかった。

しかし「これが祖先からの言い伝えのものに違いない。河伯様がこの蔵を守ってくださっている」と神棚をつくり、祀るようになったのだという。

酒造りには、良質の水が欠かせない。カッパは水の神が姿を変えたものだと言われる。この酒蔵にカッパのミイラが現れたのも、何か遠からぬ縁があるのかもしれない。(Mr.tsubaking連載 『どうした!?ウォーカー』 第50回)

⬛松浦一酒造(株)

佐賀県伊万里市山代町312

0955-28-0123

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