東京五輪開会式「7月24日」の天気は? 降雨確率26・7%、2011年以降は5回 開幕まで半年

1964年10月10日の東京五輪開会式で入場行進する日本選手団=国立競技場

 東京五輪の開幕まで24日でちょうど半年。4年に1度の祭典に向けた気運が徐々に高まる一方で、近年の異常気象や今シーズンの暖冬傾向を目の当たりにすると、開催期間中の天候はどうなってしまうのか心配になってもくる。とりわけ、幕開けを告げる開会式は好天に恵まれてほしい―。大会関係者を含めた多くの人々の願いだろう。6カ月先の天気を予想するのは困難と思われるので、その目を過去に転じ、歴代の「7月24日」はどうだったのか、気象庁の資料などからひもといてみたい。 (共同通信=松森好巨)

 「世界中の青空を全部東京に持ってきてしまったような、素晴らしい秋日和でございます」

 前回の東京五輪、全国中継を担当したアナウンサーがこう実況するほど開会式当日はよく晴れた。航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が国立競技場の上空に描いた五輪マークも、透き通った空によく映えた。1964年10月10日の天気は、後生に語り継がれる名場面を支える〝名脇役〟だった。

1964年東京五輪の開会式で国立競技場の上空にブルーインパルスが描いた五輪マーク

 今回の開会式は午後8時開始予定。夜間なので心配なのは雨が降るかどうか。では、都心で7月24日に降水を記録した日は過去に何回あるのだろう。

 気象庁の資料を調べると、前回東京五輪があった64年から昨年まで、1mm以上の降水を都心で観測した日は17回あった。56年間のうち17回ということは、およそ3年に1回は雨が降る計算だ。この数値を裏付けるように、東京管区気象台がHPで公表している「日別天気出現率」(統計期間1981年ー2010年)では、東京の7月24日は「晴53・3%、曇20%、雨26・7%」となっている。

 ただ、11年以降のデータをみると気掛かりな点もある。先ほどの気象庁の資料によると、13~15年と18・19年で降水を記録(合計降水量(mm)は順番に1・5、7、7、2・5、6)。9年のうち5回と、10年以前に比べ雨の降る頻度が高くなっている。

 ちなみに、五輪開会式と雨という組み合わせで思い出されるのは「人工消雨」を実施した08年の北京五輪だ。当時の報道によると、開会式当日の8月8日、雨雲の接近を感知した北京市気象局は1104発のロケットを打ち上げ、雨雲にヨウ化銀を撃ち込んだ。これにより北京郊外に人工的に雨を降らせることに成功した一方、開会式の会場に降雨はなかったという。

北京五輪開会式が行われ、聖火がともった国家体育場は中国国旗と五輪旗がはためき、華やかなお祝いのムードに包まれた=2008年8月9日未明(クロスフィルター使用)(共同)

 天気に加えて、当日の暑さも心配な要素だ。気象庁の資料から64年~19年の7月24日の最高気温を平均すると、都心で30・9度。また開会式が始まる7月24日午後8時の気温は、データが残る90年から昨年までを平均すると27・3度となっている。

 日が沈んだ午後8時の時点では幾分か過ごしやすくなっているように感じるが、年によっては32・6度(01年)や30・3度(18年)など、高温を記録している。ところで、01年7月24日の都心の最高気温は38・1度。これは7月として当時の最高記録(現在の1位は04年7月20日の39・5度)。猛烈な暑さに見舞われた同日、都内では熱中症の症状を訴えた80人が救急車で搬送された。東京消防庁の統計で、これもまた一日の搬送としては当時の最多人数だった。

 日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン」によると、熱中症の発症ピークは梅雨明け直後や梅雨明け前の晴れが続いた日であり、「梅雨明け前後の暑さに最も注意が必要」とされる。関東甲信地方の平年の梅雨明けは7月21日で、昨年はちょうど7月24日に梅雨が明けている。

暑さ対策として国立競技場に設置された空気の循環を促すファン=2019年7月3日、東京都新宿区

 そこで、今年の7月24日。開会式の会場となる国立競技場は、客席の背後にファン185台を設けたり、休憩スペースや冷水機を各16カ所設置したりするなど暑さ対策に余念がない。それでも、今月1日のサッカー天皇杯全日本選手権決勝で、最上部の3層目で観戦した人から、座席が密集し列の間隔が狭いという指摘が出た。「試合の途中、席を立とうとすると身動きが取れない」という言葉は、夏の蒸し暑い夜、数時間にわたって繰り広げられる開会式の観客にとっても切実な問題ではないだろうか。

 なお、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は昨年11月、1人1本に限り、750ミリリットルまでのペットボトル入りノンアルコール飲料を競技会場に持ち込むことを認めると発表している。近年の大会では禁じられていたが、「特例措置」として容認するものだった。前例のない暑さの中で行われるであろう今夏の五輪。選手だけでなく、観客が少しでも快適に声援を送れるよう大会関係者は今後も柔軟に対策を取っていってもらいたい。

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