DEATHRO - 2020年の幕開けにふさわしいニューアルバム「FEEL THE BEAT」を解き放つ!

99~00年の“世紀末的な質感”を目指した

──いつ頃から今回のアルバムの構成を考えていたのですか?

DEATHRO:……気が付いたら、という感じでした。日課としてコンスタントに曲を作るようにしていて。5、6曲ぐらい揃うと、アルバムの構成みたいなのがボンヤリと頭のなかで浮かんでくるんですよ。そうなると「この順番に、こんな曲があったら……」と、流れを考えながらの曲作りになり、自然にアルバムが完成しているんですよ。ライブのセットリストを組んでいく方向に近いかな。

──1stアルバム『PROLOGUE』がSUB POP的Lo-Fiガレージmeets J-ROCK、前作『NEUREBELL』がTHE SMITHS、Eins:Vierのようなクリーントーンを主体とした音を意識されたとおっしゃっていました。『FEEL THE BEAT』は、その両極を併せ持ちながらも、生っぽい音が強調された作りになっていました。

DEATHRO:毎回、「前作とは違う音作りをしよう」という意識があって。変えたいという理由は自分にとっての最良の音がなんなのか?と模索しているからで。なので『FEEL~』はバンドサウンドの荒々しい部分を強調して,バーン!ガシャーン!! みたいな凶暴な音にしようかなと……って語彙力低くてゴメンなさい(笑)。ギターもレスポールのようなハムバック系を使いドンシャリにして、ベースのYUKARIちゃん(Limited Express (has gone?)/ニーハオ!)にはミュージックマンタイプのゴリゴリ音が出るものを使ってもらい、ヘヴィな音を目指しました。

──『NEUREBELL』での冒険を経た先で、アグレッシヴさに回帰したのは驚きでした。

DEATHRO:後々になり振り返ると『NEUREBELL』は異色作になるんじゃないかな。今でもあのアルバムの中から披露する曲は「FLOWERS」、「LOST&FOUND」など限られていて、「MISTAKExxx」のようなミドルテンポの曲はなかなか披露しないんですよね。俺は基本ライブで披露することを意識して曲を作るのですが、ライブで披露しないとまるで「捨て曲」みたいだと思ってしまい。それでは曲に対して申し訳ない。その反省を踏まえて、もっとライブでのアグレッシヴさを意識しましたね、例えミッドな曲でも。

──この後にも出てくる”1999年感”を音から感じました。

DEATHRO:はい。99~00年の”世紀末的な質感”を出したくて。作品で言うなら90年代末期に活躍したBlueというV系バンドの、それまでの繊細なサウンドからレスポールとOrangeのアンプでガシガシとアメリカンな音に寄せていった後期の作品から大分影響は受けてます。この頃のV系って、今まで線が細かった音から、ラウドロック/モダン・ヘヴィネスの登場で太い音へとシフトしていったんですよね。そこにプラスして、俺とエンジニアの鈴木歩積くん(told)が共通で好きな、Queens of the Stone AgeやFoo FightersみたいなUSオルタナの要素も加えました。

──「DANGEROUS BEUTY」のシャッフルビートは、QOTSA『Songs for the Deaf』の「No One Knows」を彷彿させますね。

DEATHRO:まさに! レコーディングの時もサポートしてくれるメンバーに「割とモダンでストレートな音作りにしたい」と言っていたそうでなんですよ。

──言っていた。そう……?

DEATHRO:レコーディングの見学に来た貴族(Shinpei Mörishige、FOXPILL CULT)から、この前そう言っていたと教えられたんですよ。俺、自分に対して不注意すぎて過去の発言をあまり覚えてなくて。正直、貴族の方がこのアルバムについて詳しいかも(笑)。「Naughty Girls & Naughty Boys. Spending all lonely nights」では高速モータウンビートを、「パラノイアで踊れ」の出だしのビートはダブステップを意識したりと、とにかく今までにないアプローチを今作は入れましたね。うちのアニキ("CRAZY"COOL-幽閉、HARD CORE DUDE)が聴いた感想は「(LUNA SEAのベーシストの方の) Jの1stソロアルバムぽい」でした。

──『PYROMANIA』!? 言われてみると……(笑)。今作はDEATHROさんのギターをフィーチャーしたり、「DEAR LOVER(reprise)」ではピアノのみのアコーステックアレンジを施すなど、面白い冒険をしていますよね。

DEATHRO:「印象的なフレーズが欲しいね」と歩積くんと話していて、俺がその場で弾いたものが多いですね。聞いていて音程が不安なギターが聞こえてきたら俺が弾いていると思ってください(笑)。「DEAR LOVER」は元々『STARDUST MERODY』のカップリングに弾き語りスタイルで収録していて、アルバムに入れる際はバンドアレンジを考えていたんですよ。それが昨年4月に開催した下北沢シェルターでのワンマンで、FUCKER(谷ぐち順)との共演で気になっていた丸山鮎子さん(The DROPS)をお呼びしてピアノのみの編成で披露したところバチッとハマッて、この形で収録したいなと思いました。

──途中で入る不協和音には驚きました。

DEATHRO:実はあの不協和音は、レコーディングの際に相当苦心して「違う!もう一回!!」を繰り返し、結果ガーン! だけを繰り返していたんですよ。マスタリングをお願いしている中村宗一郎さん(Peace Music)にも「ここで不協和音を入れるとは、尋常じゃない精神の持ち主だね」と言われていました(笑)。

物申したい自分、軽薄なラブソングを唄う自分、自意識過剰で落ち込む自分……全てを並列したかった

──曲タイトルに日本語のみの楽曲が増えたのがまず、パッと見強いですね。

DEATHRO:「Mr.サンプリング」なので、これまでの曲のタイトルはいにしえのJ-ROCKから元ネタを結構もらっていたんですね。活動も4年、少しずつ自分の“色”みたいなものが見えてきたので、そろそろ楽曲に合ったタイトルを付けてもいいかなと思って考えた結果、日本語タイトルがパッと出てきた……という理由がおよそ3割。あと2019年の上半期に吉川晃司さんを狂ったように聞いていて。吉川さんの曲って回りくどいタイトルが多いんですよ。

──「サヨナラは八月のララバイ」とか、「KISSに撃たれて眠りたい」とか。

DEATHRO:その回りくどさにやられてしまってつけました。それが7割……て、これも結局サンプリングかよ! って話ですが(笑)。例えば「瞳の中の迷宮」は「迷宮」と書いて“ラビリンス”読みにしています。

──ルビ振らないとわからない(笑)。歌詞もものすごくDEATHROさんのパーソナルな色が濃く表れた内容になっていますね。

DEATHRO:そうですね。『PROLOGUE』が割と「人に何言われようと自分がやるべきこと」についてを言葉にして、『NEUREBELL』はポリティカルな面に焦点を当てた「今という時代について」の言葉と、結構ピンポイントで。なので、今回は俺の中にあるもの全てを、同一線上に並べてみようと思って。俺が書く歌詞の内容って5パターンしかないんですよ。「県央というマチについて」、「軽薄な恋愛歌謡曲」、「社会や権威に対する怒り」、「自分の中にある葛藤」……あっ、4つだ(笑)。この4つは、どれも俺の中にある全てのものなんです。物申したい時もあれば、軽薄な恋愛もするし、自意識過剰で落ち込む自分もいる。どれかに一つフォーカスをアテて語るより、自分の内面を並列に広げることが今の自分の気持ちに一番近いんじゃないかと思って、持っているものをテーブルに全て横並びにしてみたという感じです。俺は自分の中から出たものを歌うしかできないタイプなので。

──改めて自分を客観視しようとした結果、ですか?

DEATHRO:アルバムのために曲を作り進めていたら、気が付いたらパーソナルな言葉が多く出てきたって感じですね。『NEUREBELL』発売以降、大きな出来事が続いたんです。まず、20年間共にしてきた兄妹とも言える愛猫二匹が相次いで亡くなったこと。この別れは自分史でも、ものすごく大きい出来事でした。あとは平成最後のツアーから4人編成になったり、自主企画を開催したりと音楽面で色々な変化があり、貴族に以前から敬愛するRODさん(藤崎賢一、JUSTY-NUSTY/METALIC/ex:CRAZE)という自分にものすごく強く影響を与えてくれる人との出会いがあったりと、色んな意味で忘れられない1年半を過ごしていたんですよ。

──令和という時代を迎えたことも大きい?

DEATHRO:ない! ……と言ったらカッコイイのでしょうが、それは嘘になりますね(苦笑)。

湿っぽいことを湿っぽく歌うのは俺らしくない

──アルバム製作の際にA面とB面を考えて曲順を決めていると、過去のインタビューでおっしゃってましたが、『FEEL~』はどういう分け方になりました?

DEATHRO:えっ……、前半が「動サイド」、後半が「静サイド」です……ってゴメンなさい! 今テキトーに考えました。分け方は、そこまで考えていませんでしたね(苦笑)。

──けど、その分け方は腑に落ちました。5曲目の「PLASITC EMOTION」までと、6曲目の「パラノイアで踊れ」からでは、明確に音と言葉のアプローチが変わりますよね。

DEATHRO:はい。「動サイド」の方はライブで披露した時の絵が思い浮かぶような曲が並んでいます。

──しかも先ほどの4つの要素が見事に同じ地平線に見事に乗っていますね。

DEATHRO:「瞳の中の~」と「DANGEROUS~」は自分の中にある“J-ROCKあるある”を詰め込んだような内容になりましたね。「瞳の中の~」は、俺が県央から都心に向かう間に武蔵小杉あたりのビル群を見て感じた”中心地に向かっていく時のヴァイヴス感”を、「DANGEROUS~」はデカダンでザ・軽薄な恋愛を俺なりに解釈したものを抽象的に描きました。この2曲は俺の中の軽薄さを楽しんでもらえればと。“J-ROCKあるある”で言うなら、「PLASTIC~」は今の世の中を皮肉っているのですが、中に「気づかぬままの傀儡(マリオネット)」という歌詞が出てきます。ギターをサポートしてくれたオノちゃん(小野寺陽多、Daiei Spray)には「一発で元ネタがバレるよ!」と苦言を呈されまして。まぁ、そこは自分を貫き通して入れました。折れちゃうと、この歌詞と真逆のことになっちゃいますから。気分のままに踊らないと、そこは。

──アハハ! 一方で、「胸に追憶の赤い薔薇を…」では別れを、「Naughty Girls~」は孤独について歌われているという、DEATHROさんの内面を歌っています。

DEATHRO:「胸に追憶の~」は先ほど出た、猫の一匹についてです。彼は昨年6月ごろに亡くなってしまって、これまでの感謝を歌いたかったんですね

──別れの歌ですが、カラっと明るく送りだしていますよね。

DEATHRO:湿っぽいことを湿っぽく歌うのは俺らしくないなぁと。いつか自分もいなくなってしまうわけで、またいつか会えるその日まで、という期待にも似た気持ちですね。『Naughty Girls~』は、俺の地元にあるショッピングモール、アリオ橋本に行った時に感じたことを歌いました。俺はよく一人でZARAに衣装兼洋服を買いに行くのですが、フードコートを通ると、俺と同世代の人たちが子どもを連れてご飯を食べる光景に遭遇するんです。その時、なんというか疎外感を勝手に感じてしまって。俺、心地よい場所や雰囲気の中にいると、なぜか周囲から自分がなぜか阻害されている気がして、勝手に居心地悪くなって離れていってしまうんですよね。

──「Naughty Girls~」にも登場していますが、よく歌詞に「ストレンジャー」という言葉が出てきますよね。COSMIC NEUROSE時代にも「Strangers」(『Just A Fucker』収録)という歌がありますし、人とどこか相容れない気持ちを持っていると。

DEATHRO:ですね。この思春期特有の自意識過剰ぶりがよく表れた歌詞になりました。介助に入ってるクライアントの大学生にも「この中二病が!」とよく言われていますが、その通り(笑)。中二病のベテランなんですよ。

DEATHRO From Above 1999

──“別れ”と、中二病……もとい“他者とのアイソレーション”というテーマは「静サイド」でより、ミクロな視点で展開されているような気がしました。

DEATHRO:改めて見てみるとそうですね。

──“別れ”というテーマは、今までの作品ではあまりモチーフとして登場してきませんでしたが、今回歌おうと思われた理由は?

DEATHRO:今まで“別れ”というものについて歌うことに対して難しいなと、無意識的に避けていたんですね。それが、俺もサヨウナラを言う機会が増えてきて。今は別れに真っすぐ向き合い、20代の頃、バンドでやれなかった表現をできるなと思ったんです。

──その“別れ”の色が特に濃く出たのが、先行配信された「FEEL THE WIND」かなと。

DEATHRO:はい。「FEEL~」は、50ccのバイクに乗って走っていて風を受けた時に曲が浮かんできたんですよ。令和を迎えたタイミングでもう一匹の猫が亡くなって、そんな時、横浜のR&R GARAGE GOSPELバンド、THE LORD RUNNERSの斧寺カズトシが忌野清志郎さんが亡くなった際に「亡くなりはしたけれど、それは世界の一部になったということ。逆にいつでも会えるようになった」と話したのを思い出して。「彼らはこの世界の風や風景になったんだ」と思ったら、俺は常にその風を常に感じていたい、という想いが湧いてきて、このサビと歌詞が生まれました。

──アルバムタイトルの『FEEL THE BEAT』も「FEEL~」の歌詞にかかってきますね。

DEATHRO:俺がビート系のボーカルであることと、猫が亡くなる時に鼓動が弱くなっていくのを感じて、いつまでも生命の存在を感じていたいという、そのダブルミ―ニングで付けました。……ってなんか、だんだんスピリチュアルぽい話になってきてません? ヤバイなぁ(笑)。

──いえいえ(笑)。”オマエと出会った1999”という歌詞が出てきます。1999年はDEATHROさんにとってどんな年ですか?

DEATHRO:COSMIC NEUROSEに「Punks From 1999」(『4Lions Standing in Wilderness』収録)という曲があるぐらい、ずっと1999年に固執し続けているんですよね。Fool’s Mateを片っ端から読み漁り、それ以前から好きだったV系と並行しながら、白黒ページに登場するless than TVをはじめとしたハードコア/パンクの存在を知るようになって。そこで気になったU.G MANのレコードを初めて買い、ドップリとその世界に浸かりはじめたんですよ。そして今年、去年に亡くなった愛猫二匹が家に来た年であり、「デスロ」と名乗り始めたのもこの頃と、今に至るまでの人生を構成するファクターとの出会いがあった年だったんです。

──1999年というと、世紀末を迎え、いわゆるノストラダムスの大予言がなんだったのか? 2000年問題が叫ばれるなど、世界的にも変化を目の前にした年でしたよね。

DEATHRO:ノストラダムス! そうした「世界の終わり」を子ども心ながらに信じていた最後の世代でしたね。少年マガジン読者としては『MMR』には色々と考えさせられました(笑)。この頃に流れていた世紀末感を俺はずっと引きずり続けているんですよね。あれから20年、今はあの時想像していた終末のイメージを超えてしまいましたね。特にこの1年で「この先が無限にあるわけではない」と強く意識するようになってきて。なんというか……「切羽詰まっている感」があるんですよ。

──それは危機を感じているということ?

DEATHRO:変化の潮目のど真ん中にいる気がするんです。先日RODさんとお話をした際、RODさんは現在50代半ばで、あのロックスタイルをいつまで続けられるのか?を真剣に考えていらして。俺も30代半ばを迎え、生き辛い世の中になっていくと共に、モチベーションと鮮度を保ちながら現役で音楽をやるという選択肢を取るのは中々難しい、音楽は一生ものだと言いつつもプレイヤーとしてはそう上手くわけではないな……と考えるようになってしまって。その「どこまで、いつまで、自分は走り続けるのだろうか?」という、20年目を迎えた今の自分の中での想いが「FEEL THE WIND」には反映されています。

──それは戸惑いに近い感情ですか?

DEATHRO:いや、今思いついたことは全てやろうという、焦りにも近い気持ちかな。それこそバンド時代は、何も考えずやっていましたからね(笑)。

突き破れなくていい。前向きに考えられないことは悪いことなのか!?

──その自分への焦りは「パラノイアで踊れ」に、ものすごく表れていますね。

DEATHRO:はい。全然打ち破れなくて。けど、自分はここで生きていくしかない、そんな自分でいるしかない、という感じですよホント。

──特に、「『フツー』になんてなれなくて、『突き抜ける』事も出来なくて」という歌詞の、自己認識の厳しさには驚きましたよ。

DEATHRO:この「『突き抜ける』事も出来なくて」という言葉はずっと温めていた言葉なんです。ソロ1年目の時にドラムの川又(慎)くん(Not it? Yeah!)が、俺らがお世話になっているある人から「DEATHROさんは突き抜けきれていないね」というライブの感想をもらって。黙っていればいいのに、川又はそういうのを悪気なく言ってくるんですよね(笑)。

──(笑)。しかし、大分辛辣な感想ですね。

DEATHRO:けど不思議なことに「悔しい!」とか「よし、ぶち破ってやる!!」という意識にならなかったんですよ。確かに、全て振り切ってしまえるカッコイイ人はいますが、そうじゃない良さもあるはずだと常に思って。例えばある日テレビを見ていたら、モデルのけみおさんが出演していたんですね。けみおさんはカミングアウトをされていて、今LGBTQへの風当りが強いことに対して、「マイノリティであることに後ろ指を指されても気にしない。むしろ笑い飛ばしてやった方がいい」と語っていたんですね。その姿勢がものすごくカッコイイと思った反面、世の中には何気ない言葉を笑い飛ばせず、その一言に躓きウジウジと悩んだり、ムキになって怒るヤツだっているんですよ……俺自身まさにそういう人間で。決して生き方が器用ではないのは先ほどの話でも分かってもらえたと思いますが、前向きに考えられない人が悪いのか?と聞かれたら絶対にそんなことはない。“笑い飛ばせない”“打ち破れない”ことについて、ストレートに書きたい、歌いたいと思ったんです。

──バンド時代も自意識についての曲はありましたが、スタイルは違っていましたよね。

DEATHRO:昔は悩みや葛藤を歌ったとしても「殻を打ち破れ!」と最終的にポジティブシンキングに落ち着いていましたね。この言葉をもらってからは、突き抜けられなくてもいいから普遍的に良い歌を作りたい!と思えるようになりましたね。

――「突き破れないこと」を後ろ向きにしないところに“らしさ”が現れていますよね。

DEATHRO:ロマンチストなので、希望は必ず入れたい。アイロニカル、ニヒリスティックになるのは簡単ですから。

──DEATHROさんのステージは、エネルギーを感じさせる一方、どこか自分に対して思慮深いと言うか後ろ向きで見ている部分を感じるのは、そういう意識があったからですか。

DEATHRO:いやぁ、メチャメチャ自己嫌悪を毎日抱いていますよ……って、毎日は言いすぎですが。未だに「俺はここにいていいのか!?」と思うことがあります。けど、ムリやり変えようとしても無意味。いつか自然に楽しく振舞える日が来るまで、俺はこのままでいようと。そういう立ち方も悪くないだろう?って。

これからも常に「軽薄なロックンロール調歌謡曲」であり続けたい?

──今回のアートワークも特徴的ですね。今までは写真でしたが、今作ではイラストレーターのカナイフユキさんを起用されています。

DEATHRO:カナイさんとは一度も面識が無かったのですが、彼の描くイラストは大好きでよく拝見していたのでぜひお願いをと。完成作が送られて来た時にはビックリしました。今回は中学生の青春時代から始まったものの凝縮された部分が強いので、制作しながらふとアルバムにテーマカラーがあるなら「青」だと思っていたんです。そうしたら、カナイさんが、青を基調にした絵を作ってくださって。カナイさんもこの作品を聞いて「青」ぽいと思ってくださったんでしょうね。

──また、このイラストのDEATHROさんがいい。キメた表情に見える一方、目線と口角の上がり方からどこか物憂げさも感じられるんですよ。

DEATHRO:依頼の際に細かい注文はしなかったのですが、一つだけ「美意識と生活感の挟間」というコンセプトを提示したんですよね。そうしたら見事にそのコンセプトを汲んでくださいましたね。最近お会いする機会があったのでお話をした時に、俺の勝手な印象で恐縮なのですが、カナイさんもきっと辛さなどを笑い飛ばせないタイプ側の人だなぁと感じて、逆にカナイさんも俺の自意識に苛む部分に何かを感じてくれた気がしました。またスピリチュアルな話になりますが、シンクロニシティはあるんだなと思いました。

──偶然が生んだジャケットも含め、ものすごいDEATHROさんという人の人柄が強く滲む作品になりましたね。

DEATHRO:ありがとうございます! ……ってこれで大丈夫ですか? 固くなってませんか? 今後の展望みたいなのを話しておくとかやっておいた方が……。

──アハハ! では、2020年のDEATHROの展望をお伺いできますか。

DEATHRO:11月25日からツアーが始まり、最終日の5月12日には渋谷WWWという今までにない大きな会場でやらせていただきます。最高のものを見せますのでよろしかったら。あと、すでに何曲か形が見えてきたので、もう1枚何かリリースしたいですね……今のところミニアルバムとして構想中です。個人的には今後もブレることなく、カルチャーヒエラルキーゲームとは無関係なところにずっといたいなぁと思ってます。

──それはどういうことですか?

DEATHRO:マニアックにはなりたくないんです。このスタイルをやっていると、90年代音楽へのアイロニーとか、「狙った音」、「斜め目線」という見方をされるんですよね。いやいや、もう単純に好きなことをやっているだけなんで。そうやって何かをやる度にまとわりつく、“枠”に押し込まれるのはなんかむず痒い。なんなら「○○チャー」が含まれる言葉が本当に苦手で(笑)。自分の音楽を「文化」とか「文脈」いう枠に当てこまれるのはなんか居心地悪くて。予備知識とかが無くても聴いたノリで一緒に口ずさめるような、本当に常に軽薄な音楽であり続けたいですね。

──……良いこと言いますねぇ!

DEATHRO:と言っても、さっきから言っている“軽薄”って言葉も、BOØWYの『BOØWY』が発売された時「なんのためにベルリンにまで行ってレコーディングしたのがわからないぐらい、軽薄なロックンロール調歌謡曲のオンパレード」とミュージックマガジンで酷評された文章からのサンプリングですよ。

──よりによってそういうところから(笑)。確かに権威ある批評家の一部からBOØWYって“軽い”とバカにされていましたよね。それの何がいけないの!? って思っていたので、その言葉に胸がすく想いですよ。

DEATHRO:BOØWYがはっぴいえんど史観の方にそう言われるスタンスも含めて好きなんですよ。それって、権威に反抗する証ですよね。なんなら後ろ指を指されるぐらいの方が面白いじゃないですか。

© 有限会社ルーフトップ